bemod

2010年08月29日

コンテンポラリーアニメーション入門 第4回

2009年12月12日/16:00−20:30/東京藝術大学 馬車道校舎

コンテンポラリーアニメーション 第4回山村浩二氏による東京藝術大学の公開講座。アニメーションの無料イベントとしては、この講座の右にでるものはない気がする。いやマジで。

今回はプリート&オルガ・パルン氏の作品の上映とトーク。作品は『ガブリエラ・フェッリなしの人生』と『雨のダイバー』が上映された。上映前に解説が配布されていたので、そこに書かれている解釈を補助線にしつつ見ていたのだが、どちらもなかなか難解な作品だった。

『ガブリエラ・フェッリなしの人生』は、男と女の関係性を巡る話で、その二人の間に様々な人や生き物や出来事が差し挟まれる。正直言って、1回見ただけではどういうことが言いたいのか釈然としないのだけど、愛の問題も、二人の間のことだけでは決して完結しないという「セカイ系アニメ」とは逆の回路で作られているような感じの作品だった。

それは、『雨のダイバー』にも言えることで、海岸近くで沈没していく客船の中に最愛の女性がいる水夫が、一刻も早く海に飛び込まなければいけない状況であるにもかかわらず、ゆっくりと準備を進めて前に一歩踏み出す様子がない。また、海で起きている大惨事の後ろ側の道路では地味な交通事故が起きていたり、救助する側の人間が災難に巻き込まれたりと、こちらも主題以外の余剰を取捨選択するという基本的なストーリーの方程式に従っていない。

しかし、だからこそ見えてくる距離感というようなものもあって、それぞれの小さな物語に対してどこか人事で冷めた感じ残る。パルン作品の凄いところは、そんな作品の中にユーモアを差し込んでいるところで、決して突き放すだけの作品にもなっていない。その微妙な距離感が何とも不思議な印象を与えていた。

上映後のトークも素晴らしかった。同時通訳つきで山村氏とパルン夫妻の対談で内容に踏み込んだことも語られていたように思うが、あまり記憶に残らずw 二人ともエストニア在住で、その地域に根ざした作品作りをしているようだが、妻のオルガ氏はフランス出身なのかな? ちょっとそのあたり曖昧だけど、オルガ氏のほうが雄弁に語っていたように思う。

Posted by Syun Osawa at 01:47