bemod

2010年10月08日

マンガFX入門

原作:古井一匡/画:武井宏文/2009年/ダイヤモンド社/四六

マンガFX入門FXをやろうと思ったことは一度もないし、今後やるつもりもない。それは、1年半ほど前に結構な数の投資本を読んでいた時に、「FXはコインの裏表で賭けをやっているようなものだから危険である」と書かれていたからだ。

にもかかわらず、この本を読もうと思ったのは、紀伊国屋新宿南店に置いてあったフリーペーパー版のマンガFX入門(このマンガの第1章がまるまる掲載されていた)を手に取ったからで、その完成度の高さ…というか、導入のスムーズさに感心したからだった。FXに誘い込む手口として、上手い儲け話だけを羅列している本が多い中、この漫画ではそういう上手い儲け話的なノリを薄く批判しながら、「それでもFXはやる価値があるよ!」という導線を引いている。

さすがに金融バブルの崩壊であぼーんした個人投資家が多く、ハイレバッジに対する制限を加えようなどという議論が出ている昨今、依然と同じような宣伝文句でFXに個人を引き入れるのは難しいのだろう。そのために、そうした批判をある程度引き受けた上で、「それでもFXだよ」という流れで漫画を展開させていたのはなかなか上手いと思った。

ようするに、勢いに任せてFXをやったら失敗するけれど、慎重に状況を見ながらやれば、ある程度確実に稼げますよというコンテクストを作り出すことで、新規顧客を釣ろうとしているわけだ。

僕はFXをまったくやらないので、その話がどの程度信頼に足るものなのかは判断できないのだが、ニコニコ生放送でやっているFX実況の放送を見ているかぎりにおいては、局面、局面でのポジション判断というのは、馬券買う時の判断と大差ないような気がしてならない。みんなが同じゲームボードの上で、次の瞬間に上がるか下がるかという心理戦をやっていて、誰もが儲けようとしている。投入されている資金は勝者に与えられる賞金みたいなものだと考えれば、このゲームボードの上で最初に餌食になるのは新参者ということになるのではないか。

だとすれば、今からFXをやろうというのは、しかも今の不透明な状況でFXを始めるのはかなり危険な賭けだということになり、結局、僕はFXをやらないという最初の判断だけを強化させることになる。何だか話がおかしな方に流れてしまったが、この漫画が担っていた「新参者にFXへの導線をつける」という役割については、かなり誠実に果たしていたのではないだろうか。そういう意味で、かなりまっとうな導入漫画だったと思う。

Posted by Syun Osawa at 21:29