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2011年09月15日

やめないよ

三浦知良/2011年/新潮社/新書

やめないよ震災の後にあったチャリティゲームで、Jリーグ選抜として出場したカズがゴールを決めた。おっさんなら誰しも感動しただろうこのシーンのすぐ後に読み始めたもんだから、タイトルの「やめないよ」ですでにご飯3杯いける感じだった。

とはいえ、この本には胸を打つようなモチベーションを上げる言葉が埋め尽くされているわけではない。むしろ、現役選手としてどう日々すごしていけばいいかという実戦的なことが書かれている。僕はそのことに、さらに感動した。

例えば、日本の侍の精神論を説いた『葉隠』は、平和な時代を生きた山本常朝によって書かれた。その一方で、戦闘に明け暮れた宮本武蔵やチェ・ゲバラは『五輪書』や『ゲバラ日記』などの実戦的な書物を残している。カズが書いたこの本は後者のタイプで、懐古的な精神論に浸るのではなく、中年になった今のカズがプロとしてどのようにあるべきかを綴っていた。まさに、戦う男の書いた本だった。

だから、本を読み終えた後、『やめないよ』というタイトルの言葉が、さらに強さを増して僕の胸に押し寄せてきた。そして、お前はどうなんだ? と続けて問われた気がして、少し苦しくなった。

Posted by Syun Osawa at 01:58