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2012年03月07日

緑子/MIDORI-KO

監督:黒坂圭太/2011年/日本/UPLINK X

個人制作系のアニメ作家として長らく活躍されている黒坂氏の新作。作品の完成がアナウンスされながら、何年経っても公開されなかった本作が、2011年になってようやく公開された。黒坂氏の事は昔から知っていたわけではないのだが、彼が手がけたDIR EN GREYの「Agitated Screams of Maggots」のMVを見て以来、その動向をずっと追っていたのだ。

正直、ブチ切れた作品になることを期待していた。そして、その期待は裏切られてしまった。凄く雑な言い方をしてしまえば黒坂版『千と千尋の神隠し』のような印象で、ストーリーがキッチリと想定の枠内におさまっている作品だった。

僕が裏切られたと書いたのは、ストーリーが破綻しているはずだという勝手な思い込みが先にあったからで、「緑子」という作品の責任ではない。僕の勝手な期待が長い期間をかけて熟成されすぎてしまい、僕の中にもう一つの『緑子』ができ上がってしまっていたのだろう。ユーリ・ノルシュテインが1980年からゴーゴリ原作の『外套』をアニメ化しているが、あれにしたって期待値が高まりすぎてしまい、作品自体がその期待値を超えることはほとんど不可能な気がしている。

作品というのは作品それ自体も重要なのだが、その作品の後ろ側にある作家のプロフィールや人々の様々な反応もセットになって消費されている。だから、黒坂アニメの新規客と常連客では作品に対する印象がずいぶん違ったのではないか、そんなことを思っていた。

今回は赤塚若樹氏とのトークイベントが併催されていて、こちらも面白かった。インディペンデント系のアニメ業界に長くおられる二人なのに、初対面だったらしい。

Posted by Syun Osawa at 01:34