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2012年06月20日

すべては「裸になる」から始まって

森下くるみ/2008年/講談社/文庫

すべては「裸になる」から始まって花村萬月氏の解説が、AVの内容は知らんけど彼女には文才がある、というほめ方をしていて、ネットの感想なんかを見てもそういう世論が作られている。それはそれでいいことなのだろうけど、AV女優としての森下くるみファンとしてはその手の空気はちょっと物足りない気もするね。

僕は初期の森下くるみ作品はほとんど見てると思う。一番好きなのはドキュメンタリー風の『AV女優』で、あれほどいろいろ考えさせるAVはなかったなと今でも思い出すほどだ。

この本ではデビュー当時の様子や撮影の裏話、恋愛に関する話などが包み隠さず書かれていて、彼女のシュートな一面を垣間見ることができる。その中で最初に面接に行ったAV制作会社で落とされたというエピソードが書かれていて、こんなに可愛い子でも落とされるのかとちょっとビックリした。もっともデビュー作の『うぶ』を見れば、それもあり得るな…と思わせるのだが、じゃあなんでAV女優になろうと思ったんだ? みたいな動機の部分は曖昧に書かれていて、そこは最後までぼんやりしたままだった。

もっとも、その曖昧こそが現代社会を映しているはずで、それは何もAVという職業に限った話ではない。僕だってなんで今の仕事をやってるのか? みたいなことに明快な答えを持っているわけではないしね。

Posted by Syun Osawa at 23:15