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2012年11月15日

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

與那覇潤/2011年/文藝春秋/四六

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史與那さんが出演されていたニコ生を見て、本の内容に興味を持ったので読んでみた。日本よりはるか昔に成し遂げていた中国の近代化と日本の歴史を重ね合わせながら「中国化」の流れを読み解いていており、歴史を多面的に知るという意味でとても勉強になった。

日本はずっと中国の真似をしながら発展を遂げてきた国である。中国は宋朝の時代に近代化を成し遂げており、日本もそれに呼応して早い段階で近代化する可能性はあった。それにもかかわらず、逆に舵をとるような(近代化と逆行するような)動きが何度となくあったそうな。その代表的な時代が江戸時代である。

江戸時代は身分も固定され、人の移動も限定的だった。村社会的な共同体の代表格として語られることの多い江戸時代は、窮屈ではあるが最も平和で安定した時代だったというイメージが今の日本でも広く浸透している。その後、明治に入って日本は中国が1000年前に達成した近代化の道を再び歩むことになり、現在に至っている。

いま「スローライフな江戸時代に戻ろう!」といった声が聞こえてくるのは、明治以降続いてきた「中国化」に対する揺り戻しである。戦後の会社が働く男性の共同体として機能していたのも、日本人の中に封建制に心の安定を求める人が少なからずいるからだろう。

では、中国化することがいいのか? と問われるとこれはわからない。筆者もそれがいいとは書いていない。日本人の集団主義的な振る舞いは国民性のような気もするし、それによって社会が発展を遂げてきた部分もあるからだ。しかし、制度としての再江戸時代化が限界に来ているというのは僕もそのとおりだと思うし、中国化の流れは避けられないようにも思う。

これは「日本人はグローバル化をどのように受け入れるのか?」という問いのようにも聞こえる。ネトウヨのようにレイシストに成り下がって生きるのは嫌だし、だからと言って国際化万歳で生きることもできない。正解がないだけにとても難しい問いだ。

Posted by Syun Osawa at 01:31