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2013年06月20日

売春未満 〜 新・名前のない女たち 素人女性編

中村淳彦/2011年/宝島社/四六

売春未満 〜 新・名前のない女たち 素人女性編アイドルヲタ活動をしていると、これは援助交際2.0以外の何ものでもないのではないか? と思うことがあり、そんな経緯から売春のルポを読んでみることにした。

この本に登場する女性のプロフィールは専業主婦、OL、教師、元アイドルと様々だ。共通しているのは自分の性行為をお金にかえているということである。資本主義の社会において「自分」は大事な商品の一つであるが、その自分をどこまでお金に還元できるモノと見なすかはもはや個々人の価値観・考え方と言うほかない。

「自分」という価値をお金に買える商売という意味では、アイドルの現場も同様だ。こちらの現場でもギリギリの攻防は続いており、最近は握手会やチェキ撮影に加えて客との散歩やカラオケをサービスに加えるグループも少なくない。これなどは一昔前なら援助交際に分類されていてもおかしくないだろう。

僕は大学の頃から環境問題に興味を持っており、その観点からみると「自分」ビジネスというのはとても効率のよい商売に見える。なぜなら元手がかからないために環境負荷が少ないからだ。だから今後この手のビジネスはますます伸びてくると思う。

問題はどこで線引きするかなのだと思う。この線引きのラインについて僕は明快な答えを持っていない。だからと言って何でもありだと思っているわけでもない。というのも、この本に登場する女性たちはそれほど幸せそうには見えないからだ。たくさんお金を得ても満たされない心の空虚感や不安感を彼女たちは抱えている。その一番の理由は「ここから先はどれだけお金を積まれても拒否する」という絶対的な価値を自分の中に置いていないためだという気がしてならない。

僕は売春そのものが悪だという風には思わないし(法律的にはアウトだが)、売春婦としての生き方も肯定されるべきだと思うが、ズルズルと流されるままにお金の価値に自分を埋没させていくのは危険だと思う。なぜなら自分を商品に変えた結果、自分自身が変わってしまうからだ。だからこそどこかに自分の絶対的な価値を置き(プライドと言いかえてもいいかもしれない)、それを防衛ラインにしておかなければ、結果として自分の自我を崩壊させてしまいかねない。

アイドルの商売でも同じことが言えるだろう。ヲタ相手にどこまでのサービスを提供するかを決めるのは事務所であるため、事務所の意向にズルズル流されていった結果、次第に病んでしまって引退するというケースも各所で起きている。もっとも、売春に流れていく女性の中にはレイプなどによるトラウマを抱えている女性も多く、一概にアイドルと同じと見なすことはできないのだが。

Posted by Syun Osawa at 22:05