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2014年02月03日

激突!

猪狩俊郎/2010年/光文社/四六

激突!著者の猪狩氏はこの本が出る前にフィリピンのマニラで自殺している。一説には他殺だとの噂もある。この本では検察、暴力団、弁護士会と対峙したときの様子を実名をあげながら回顧している。普通ならぼんやりと包み隠すようなところでも一切の躊躇なく書いており、この内容だとたしかに他殺という線もありうるな…と感じられるほどだった。

僕がこの本で著者に共振したのは、彼が徹底的に空気を読まない生き方をしようとしていることだ。ときにはそれが軋轢になって様々な問題を引き起こしているのだろうが、自分の信念・生き方に対して嘘をつかない姿勢を貫くことはなかなかできることではない。なぜなら今の時代は周囲の同調圧力が強く、空気を読むことを半ば強制されているからだ。その空気に違和感を感じたとしても、多くの人にとってそれが最適化されたものであるならば従うべきだという見えない力が自分達の選択の幅を狭くしている。僕はそれを「最適化問題」と勝手に呼んでいる。

著者のように自分の信念を貫けば時にはぶつかることはあるだろう。特に相手が信念を持って生きているのならばなおのことだ。そのぶつかりを避けて、場の空気を先読みしながら最適化された方向に流れようとすることは一見合理的に見えるかもしれないが、そうした最適化への流れが自分たち自身の可能性を小さくしているようにも思える。

「時代の閉塞感」などいう言葉が聞かれるようになって随分経つ。空気を読みあって最適化した結論を導くという選択が結果として閉塞感を抱かせているのだとしたら、激突によって誰もが想像していなかった新しい道が開かれるかもしれないという可能性についてもう一度考える必要があるのだと思う。著者の生き方からそういうことを考えさせられた。

Posted by Syun Osawa at 21:25