bemod

2014年02月14日

欲望のゆくえ 子どもを性の対象とする人たち

香月真理子/2009年/朝日新聞出版/四六

欲望のゆくえいわゆるロリコン男性の実像に迫ったルポ。極めて冷静な筆致で様々なロリコン男性の姿を描き出している。僕も他人事ではないだけに非常に興味深く読んだ。

煽りの文章をそのまま引用させてもらうと内容は以下のような感じ。

少女への想いを文学で昇華させる会社員、幼女を性的に描く漫画家、男児に加害し、相互援助グループに通う男性、”理想の子ども”を空想する元教師、二次元の少年にだけ萌える女性漫画家、「ジュニアアイドル」のイベントに通う男性、少年タレントを応援する男性ファン……。実際、幼児のときに被害に遭った著者が、子どもを「性の対象とする」人たちの生き様と苦悩を追ったルポルタージュ。

内容が内容だけに、読む人によって意見が大きく分かれそうだ。たんなる性犯罪者だと考えればすべてが十把一絡げの悪玉菌に見えるし、ゲイと同じマイノリティの話と考えれば十分に考察するだけの価値のある対象ともなるだろう。

特に僕は中年アイドルヲタクだけに、ジュニアアイドルを扱った章については他人事とは思えなかった。今のアイドル業界を金銭的に支えていると言われているのが20代後半以上の中年男性である。アイドル願望(ある種の承認欲求かもしれない)を満たしたい少女とロリコン男性の欲望が金銭のやり取りによって等価交換され、デフレ時代の中では珍しく小さなバブルを生み出している。

僕はこの情況を「援助交際2.0」と読んでいるが、この話をここで書くにはちょっと大変すぎるので、いずれ余力のあるときに書いてみたい。社会学者の宮台真司氏は90年代に援助交際をする少女達の心理について研究しており、あのあたりからアイドル願望をもつ少女の心理も考えられる気もする。

ともかくジュニアアイドルに特化して言えば、彼女たちがその後どうなっているのかということに関してはかなり気にして追いかけているつもりだ。そして、アグネスが騒ぐほどには大きな問題が起きていないようにも思える(僕が知らないだけかもしれないが…)。ただ、グラビア系で活躍している子の中には、複雑な心境を吐露して引退する子もいるのでその人のブログを引用しておきたい。

2012-06-14 23:01:28
ご報告。
テーマ:ブログ

この記事を読んで嫌な気持ちに
させてしまったらごめんなさい。

この度私、水沢えり子は
(株)アウトラン4871を
辞めること事を
ご報告させていただきます。

受験を理由にって
ブログにかきなさいと
親には言われていますが
最後くらい正直に言わせてください。

最初に言っておきます。
お母さんごめんね。
でもやっぱり
これだけは譲れないから。

アウトランを辞める事になった理由、
その中には受験もあります。
ですがそれだけではありません。

仕事に対しての不満があり
精神的、肉体的にも限界でした。

でもそれ以上に
事務所のみんなが大好きだったし
こんなえりを応援してくださった方が
いたからやめなさいと言われた時
嫌だと言いました。

お仕事を始めた頃、
家にも学校にも居場所はなくて
そんなえりに居場所を
作ってくれたのはアウトランの
みんなでした。

家で嫌な事があっても
学校で嫌な事があっても
みんなに会うと楽しかったです。

だからこそ
辞めなきゃいけないと思うと
涙が止まりませんでした。

DVDをお母さんがみて
幻滅したらしいです。
激怒されました。

そういう物が世の中に商品として
売り出された事もちろん本意ではありません。

本意でないのに続けてしまった事、
不満があったのに
なんだかんだやっていた事、
これは自己責任だと自覚し、
反省しています。

お母さんに言われたからではなくて
えり自身が、泣きながらDVDを撮って、
嫌な事をやっていてもしょうがないと思いました。
なにより、まわりに迷惑もかけるし
失礼だと思いました。

まだ発売していない
DVDのイベント、
今月行う予定だったイベント、
もう決まっていたDVDロケ、
TIM'E'のライブ、撮影会、
Amebaスタジオ、ラジオ、
たくさんのお仕事を
だめにしてしまいました。

イベントだけは最後に出たいと
何度もお願いしてみたけど
だめでした。

イベントや撮影会、ライブに
来てくださる予定だったみなさん
本当にごめんなさい。

アウトランのみんなにも
ごめんなさい。

アウトランの
みんなの事がほんとに大好きだよ。
お別れも言えなくてごめんね。
もういつ会えるかわからないし
連絡を取り合う事も今は出来ないけど
えりはずっとみんなの事応援してるよ。
みんなひとりひとりに
伝えたい事たくさんあるけど
いっぱいすぎて大変だから諦めます。

えりはアウトランに入って
たくさんの人に出会って
たくさんの笑顔ももらいました。

たくさんの方に
ありがとうを伝えたいです。
ひとりでも多くの方に直接伝えたかったのですが
叶わなかったのでこの場をおかりします。

本当に本当に今まで
ありがとうございました。

ー水沢えり子ー

読解力のないおっさんドルヲタのフィルターを通してみると、彼女は学校や家族というコミュニティの中で生き辛さを感じていて、ジュニアアイドルのコミュニティに自分の居場所を見つけているように読める。しかし、このコミュニティに留まるためにはエロいDVDに出演せねばならず、そのことで学校や家族からますます孤立を深めていくというダブルバインドの情況に追い込まれている。

こういうブログを読むと苦しい気持ちになるし、上手い言葉も見つからないのだが、ブログの中で「イベントだけは最後に出たいと何度もお願いしてみた」と書いているところが本音であってくれたら…と思うのみである。

話が随分逸れてしまった。ともかく、このあたりのおっさんや少女の心理、それを取り巻く社会・市場のあり方などについてはほとんど研究がなされていないので、今後たくさんのルポが書かれることを期待している。

Posted by Syun Osawa at 23:50