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2004年08月27日

戦前・戦中作品集[2]

東京国立近代美術館フィルムセンター京国立近代美術館フィルムセンターで開催されていた「日本アニメーション映画史」という上映会にまたしても参加。前回の「漫画映画の先駆者たち」に続き、今回は「戦前・戦中作品集[2]」を観賞した。良くも悪くもこのあたりの時期は激動の時代だったので惹かれる部分が多い。

『忍術 火の玉小僧 江戸の巻』 by 田中與志
(10分/35mm/白黒/1935年/日活京都漫画部)

『火の玉小僧』シリーズ今回の上映プログラムの中でも一番見たかった作品。いわゆる少年剣士を主人公にすえたドタバタ時代劇モノ。ディズニーの影響をモロに受けているのだろうか、キャラクターデザインのデフォルメが非常にアメコミチックで今のキャラクター造形にかなり近いものがある。主人公が返答に「オッケー!」と英語を使うのが興味深い。

『火の玉小僧 山賊退治』 by 田中與志
(9分/35mm/白黒/1935年/日活京都漫画部)

山と山の谷間にロープを張り、そこで火の玉小僧と山賊が戦うシーンは秀逸。場面の設定も、ストーリーの展開も非常にアイデアが凝縮されていて面白い。コミカルな動きと躍動感のある絵作りにパワーを感じた。しかしこの頃のアニメは残酷だ。首がダイコンを切るみたいにパコパコ切れて飛んでいく。

『新説カチカチ山』 by 市川崑
(6分/35mm/白黒/1936年/J.O.トーキー漫画部)

今なお現役の御大・市川崑氏の作品。でも正直あまり憶えていない(金太郎とかのらくろのパロディもあったかな)。雨の表現がショボかった。もしかするとこの頃はまだ、セルに傷をつけて雨を表現する手法は開発されていなかったのかもしれない。

『お日様と蛙』 by 宮下萬三
(10分/35mm/白黒/1936年/横浜シネマ商会)

擬人化モノ。子供向けのためか、当時のアニメにはやたらと擬人化したキャラクターを使ったアニメーションが多い。この作品は魚とカエルの戦い。

『凧さわぎ[改編版]』 by 西倉喜代治
(10分/35mm/白黒/無声/1936年/オールキネマ社)

擬人化モノだったような記憶が。作品中に「高枝切りバサミ」が登場して驚いた。通販で有名なあの道具は、こんな昔からあったのだ。

『漫画 夢の招集令』 by 不明
(9分/35mm/白黒/1938年/三幸商会)

戦争モノ。ヒトラーなのか、ヒトラーを模したチャップリンなのかはわからないが、そのような主人公が登場し、中国と戦う。先のアジアカップの日本と中国のような茶番ではなく、当時は本当に日中戦争をやっているんだから時代背景を考えると結構恐ろしい。いわゆるプロパガンダ系のアニメ作品。

『チュウ児の羽衣』 by 山口貞三
(11分/16mm/白黒/無声/1941年/土田商会)

蝶と鼠の話。こちらも擬人化モノ。

『發声漫画 海の小勇士』 by 酒井七馬
(8分/35mm/白黒/1942年/日本映画科学研究所)

波の表現に進歩の跡が見られる。1942年というと太平洋戦争真っ最中の時期。敵を殲滅することに主眼を置いたプロパガンダ映画かと思ったら、「生産性のない戦いはやめて、お互い仲良くしましょう」として終わっていた。

全体的には、うーむ。まぁまぁでした。これは時代性うんぬんというよりも、単純に面白い作品が今回のプログラムに少なかったということだと思います。1920年代から60年代にかけてのアニメの掘り起こしがなぜかブームになっているので、これからもたくさん作品が上映されると思います。それがどう時代とリンクしていたかを検証するようなところにまではまだ至っていないようですが、そういった本も時期に出るでしょう。個人的には嬉しい流れです。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 23:06