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2004年11月03日

桃太郎・海の神兵

桃太郎・海の神兵『桃太郎・海の神兵』(監督・脚本、瀬尾光世)を観賞。1945年に公開されたこのアニメーション映画は、1942年にインドネシアで行われた海軍の落下傘部隊攻撃をネタ元にしているらしい。桃太郎の鬼退治をストーリーの下敷きにしながら、可愛いキャラクター達が戦場へと向かうというプロパガンダ映画だ。少し前に、北朝鮮のプロパガンダアニメをフジテレビなどが連日放送していたが、やってることはほとんど変わらない。そして変わらないだけに複雑な気分になる。

しかし冷静な眼で見ると実はそれほどたいした内容ではない。この程度の暴力アニメは世の中に溢れている。違うことといえば、この作品の製作を依頼したのが国であり、戦意を高揚するという明確な意図があって作られたことくらい。でもこの「違うこと」があるために、ガンダムやエヴァンゲリオンを見るような調子で見ることを許さない。作る側にとっても、見る側にとっても悲しい作品だと思う。

そういう部分を切り離して見たとき、日本らしさが光っていると感じた部分もいくつかあった。一つは主人公が桃太郎(物語の中で唯一の人間)ではなく猿の一兵卒だったこと。家族を思い、一人前の男になりたいと生きる主人公のひたむきな姿は、現在の漫画キャラクターにも引き継がれているのではないか。もう一つは、ハイライトのひとつである落下傘降下のシーン。白いクラゲのような落下傘が大量に空に浮かぶ様子が叙情的に描かれており、『オネアミスの翼』のラストシーンを連想させた。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 20:00