bemod

2004年11月28日

イワン・デニソビッチの一日

『ソルジェニツィン小説集』
アレクサンドル・ソルジェニツィン/訳:小笠原豊樹/河出書房新社

ソルジェニツィン小説集辛気臭い。あー辛気臭い。ソルジェニツィンを読もうと思ったのは、ノーベル文学賞を受賞してるからではなく、『ロシア文学案内』に出てくる彼の写真があまりにも素敵だったからに他ならない。あの写真はサブカルだと直感した。その点については後で述べる。まずは雑感なんぞツラツラと。

「イワン・デニソビッチの一日」

ソ連の強制収容所(ラーゲリ)の実態を書き出した作品。訳のわからん理由でスパイ容疑を掛けられ、放り込まれた強制所での生活を淡々と書いている。当時のソ連の末端って本当に悲惨だったんだなぁ。とにかくみんな荒(すさ)んでる。それは共産主義とかそーいう思想的なものとは違って、やっぱ「寒い」んだろうな。あと食い物がない。ぶっちゃけそれにつきるような気がする。みんなが三木谷社長みたいな生活だったら、コルホーズだろーがソフホーズだーろがいいわけでさ。

物語自体は一日の出来事を時系列に沿って追っているだけなのだけれど、これが実に辛気臭い。辛気臭いんだけど人間の描き出しが凄いんだな。生真面目な主人公、シューホフが辛い状況の中で、自分の生活をどのように位置づけ生きていくか。その苦悩がクる。善悪とかじゃない。周りがどうこうとかじゃなくて、自分は仕事をサボらない。誰であれ助けてやる。それを自分で自分に位置づけるラストに泣けた。

「クレチェトフカ駅の出来事」

これはよくわからない。列車の発着を管理する駅員が、スパイと思わしき老紳士を密告するというだけの話。「密告」する青年に焦点が当てられるが、怪しい人物を警察に「怪しい人がいます」って言うのは別に日本じゃたいした話じゃない。映画館でもそんなアナウンスしてるし。問題なのは、密告された人間が問答無用に逮捕され、その後行方知れずになるというソ連という国の恐ろしさの方だろう。崩壊してよかったねぇ。

「マトリョーナの家」

宮崎駿で言ったら『もののけ姫』系かな。「イワン・デニソビッチの一日」よりも説教臭い。鼠とゴキブリが大量にいる田舎の家に住む、糞マジメなおばあちゃんの家に居候する先生の話。鼠とゴキブリはちょっと…。僕の安アパートにもたくさんいるので笑えない。

「ソルジェニツィンはサブカル化するか?」へつづく

Posted by Syun Osawa at 01:57