bemod

2005年02月03日

CIAスパイ研修 ある公安調査官の体験記

野田敬生/現代書館

CIAスパイ研修メールマガジン「ESPIO」でおなじみの野田敬生氏が、公安調査庁にいた頃につけていた日記をベースに書かれた本。公安調査庁がCIAにスパイ研修に行っていたという事実に驚かされ、にも関わらず、たいした研修を受けていないという事実に落胆させられた。鈴木邦雄氏が『 公安警察の手口 』の中で同書のことを取り上げ、公安調査庁はもう必要ないというようなことを書いていたが、たしかにこの程度なら必要ないかも。

そもそも「公安」と言っても、公安警察と公安調査庁は別の組織なのだそうだ。怖いのは公安警察。こちらは戦前の特高警察のような匂いを残している。一方、公安調査庁には逮捕権もないらしい(そういう意味でも公安調査庁はCIA的と言えるのだろうけど)。で、そんな公安調査庁で野田氏は語学学校に行かせてもらい、CIAのスパイ研修まで受けさせてもらっているわけだ。とっても将来が嘱望されているじゃないか。にも関わらず彼は今、フリーでジャーナリストをやっている。なぜ? そこが知りたくて読んだ。だけどその点については最後の行に、

…そのとき、私は、その後の自分の運命を知る由もなかった。

と、触れられているだけ。うーん、残念。そんなわけで、本書の内容は野田氏がいかに公安調査庁を去っていったかという顛末記ではなかったので、名前の割にはいたって地味な印象を受けた。CIAが教えるブリーフィングとかを丁寧に書いているので、論理の組み立て方とか、分析のトレーニングとしての教本として作られていたら、もうちょっと違った読み方ができたかもしれないと思った次第。

Posted by Syun Osawa at 20:34