bemod

2005年02月19日

トキワ荘実録

丸山昭/小学館/書籍

トキワ荘実録著者の丸山昭という人は講談社の元編集で、『少女クラブ』の編集長などを経て、講談社フェーマススクールズの基礎を作った人らしい。フェーマススクールズ…ね(遠い目)。

それはさておき、漫画編集時代の丸山さんは多くの新人漫画家(石ノ森章太郎や赤塚不二夫など)を発掘したようだ。そして新人を多く誌面に登場させたことについて「まさか、ここまで大物になるとは思わなかった…」と自嘲気味に語っている。そうした態度が多くの伸びのある漫画家を発掘した要因になったんだろう。

本書では、トキワ荘時代の思い出がかなり詳細に描かれている。例えば漫画『まんが道』の中で、オーラを放つように描かれていた手塚治虫がトキワ荘に住んでいた時代というのは、実は数えるくらいの日数しかなかったという話など、些細なことだけど「トキワ荘」ファンとしては嬉しい情報だ。さらに本人が『少女クラブ』時代に手塚番をしていたこともあり、手塚氏に関する内容が多い。手塚治虫が医師免許を取るまでの経緯などは手塚関連の著作の方が詳しいだろうと思われるが、手塚氏のネーム(漫画の構想ノート)に関するエピソードはなかなか貴重だった。なんと手塚治虫はスケジュールが切迫してくるとペン入れをしながら、別の作品のネームを後述で担当編集者に伝えていたというのだ。それはこんな風だったと丸山氏は書いている。

「一ページ目、四段に分ける。一段目、平均に三等分する。  一コマ目、右上にゴチックで、しまった、アマダレ、改行、ドアがこわれた、改行、らしいぞ。  次のコマ、左下に四行で、どうして、改行、こんな、改行、ことに、改行、なるんだ、ミミダレ……。」

手塚治虫、スゲェ。

PS.
二人で少年漫画ばかり描いてきた 』の感想文でも書いた手塚治虫が長者番付のトップになった時のエピソードは、「関西長者番付の画家の部のトップになった時」というのが正解らしい。

Posted by Syun Osawa at 10:34