bemod

2005年04月14日

網状言論F改

東浩紀編著/青土社/書籍

網状言論F改この本については、ネットで唐沢俊一氏らが過剰反応したという事くらいしか知らなかったので、以下の流れでちょっとだけお勉強。

郵便的不安たち 』(朝日新聞社)

オタクから遠く離れてリターンズ
1998年の伊藤剛氏と東浩紀氏の対談

Eの呪い
竹熊健太郎氏が岡田斗司夫氏を皮肉った小説

『国際おたく大学』(光文社)
唐沢俊一氏が書いた「サブカルのパンドラの箱〜伊藤(バカ)くん問題」が裁判に発展。たしかにレベルの低い悪口ではあるけれど、愛情が反転したというか、可愛さ余っての部分が大きかったからこういう自体になったんではと勝手に思う。

伊藤さんの物語
ライターの伊藤剛氏と唐沢俊一氏の戦いが中心だが、何となく当時の雰囲気を一番よく書けているような気がする。(8pt横組みにして刷り出したら70ページを超えた。スゲ)

見る阿呆の一生 特別編
竹熊健太郎氏のロングインタビュー(今は本になった模様)

『網状言論F改』に関するネット上の言説たち
唐沢俊一氏の裏モノ日記など

唐沢俊一氏の「悪口」について
『網状言論F改』に対する唐沢俊一氏のコメントに対する返答

『エヴァ』が始まったのが1995年ですから、もう10年も経つんですね。00年代も半ばに差し掛かってるので、もはや80年代がどーとか、90年代がどーとか言ってられません。

全体を大雑把に眺めて、東浩紀氏が1998年に「 オタクから遠く離れてリターンズ 」でコミケの事務局に対して言ってたことと、2004年末に自作のプラカードを持ちながら「『美少女ゲームの臨界点』の新刊こちらでーす!」と同人誌の客引きしていた様子が自分の中で上手くかみ合わず、なんとも不思議な気分になります。ミイラ取りがミイラになったのか、それともトロイの木馬を仕掛けるつもりなのか僕にはよくわかりません。あと、伊藤さんの物語 は2005年に無知な僕が読むんだから、たしかにロゼッタストーン的な役割を果たしてます。

という前置きをさておき、とりあえず『網状言論F改』に関しては、どの文章も楽しく読みました。敵対的な物言いなども意外に少ないし、みんなマジメに何かしようとしてるのが伝わってきましたから。ただ気にかかるのはオタクを語ってるのに「マジメ過ぎる」こと。頭が良い=人を楽しませるのが上手ではないんですね。当たり前か。

話変わりまして『エヴァ』の話へ。竹熊健太郎氏が「 見る阿呆の一生 特別編 」の中で「オタク密教/顕教」という言葉を使って以下のように語っているのが印象的でした。

「『エヴァンゲリオン』は、「顕教」が「密教」に宣戦布告した作品なんだよね。」

密教と顕教の違いは詳しくわかりませんが、「顕教=本気で〈萌え〉る人」と「密教=あえて〈萌え〉てるような態度をとる人」という感じでしょうか。今の「セカイ系」につながる、えらく糞マジメで陰鬱な雰囲気の作品を是とする雰囲気や、そのあたりの人たちを「オタク」と定義してしまう風潮は、竹熊健太郎氏が言うところの「顕教」な人たちが牽引しているのかもしれません。

『網状言論F改』では「オタク」の定義に終始しすぎて話が噛み合っていません。ただし、とにかく思いの丈を述べ合って、ここを始まりにしようというような熱気は感じられます。先代のオタクが築いてきたものをアカデミックに整理して、新しい社会に生かそうみたいな事にみんなかなり本気です。たしかにそういうマジメな態度は学校の先生は褒めてくれるに違いありません。そしてそれは、大学に漫画やアニメに関する学科ができるとか、日本マンガ協会のような学会ができるとか、アニメ製作に国が予算をつけるとかそういう事なんでしょう。

で、そうやってカッチリ固めたとして、その先に何か見えてきますかね? 自由な創造空間が広がってるのですかね? ネットの世界でバカFlashが流行するのなんて、まさにそういった糞マジメさに対するカウンターだと僕は思いますけど。漫画やアニメを文学をそうしたように殺しにかかっているようにしか見えませんませんけどねぇ。僕には。

Posted by Syun Osawa at 23:47