bemod

2005年04月29日

ZOO

乙一/集英社/書籍

ZOO同書の作品がオムニバス形式で映画化された。その中の一本「陽だまりの樹」を神風動画が3Dアニメで作るというので予習の意味を込めてを読んだ。映画楽しみ…。

同書は1998年から2001年にかけて発表された短編によって構成されており、前半部分にはスニーカー文庫風のキャラ的側面が、後半にはミステリーやSFのファン達を意識した技巧的な側面が見え隠れしている。相変わらず読みやすい文体で、内容も面白い。後半の作品になるごとに僕の好きな乙一が少なくなっている気がするのだけど…単に僕がおぼこい作品に萌えるから癖があるからかも。

カザリとヨーコ
悲しい話。新劇調で昔懐かしいくらいに意地悪なお母さんが登場する。お母さんが双子の一人を可愛がり、もう一方を虐げる理由に「何で?」とはいかず、それを回避する方法ばかりに視線が向けられている。悲しい話やね。こういうのを読みたくて乙一を読んでいるとはいえ…。

血液を探せ!
トリックも面白く、キャラも立っている。主人公の強引な設定を使ってこういう面白い短編を書ける乙一は凄まじい。

陽だまりの詩
神風動画が3Dアニメ化した作品。この時点では神風作品は未見。乙一節炸裂の切ない物語で、人間不在の世界で人間を思う淡くて儚い様子が胸を締め付ける。一体全体、どんなアニメになるんだろうか? 期待ばかりが膨らんでゆく。

SO‐far そ・ふぁー
乙一の書く作品群はバラエティに富んでいるが、その中でもこういうラストを迎える作品が僕は好きだ。決して幸福な結末ではないけれど、「僕が生きているという事」についてのリアリズムが詰まっている気がする。

冷たい森の白い家
民話っぽい印象。そして相変わらず悲しい話。主人公が自分自身と向き合うとき、その周りの人間がこの話のように無造作に死んでいく感じは好きじゃないなぁ。

Closet
これも面白く読んだ。乙一の作品は基本的にすべて一人称で書かれているんだけど、ラストでその一人称の視点がググッと移る瞬間が素敵だった。

神の言葉
昔やったエロゲー『雫』を何故だか思い出す。あのゲームをプレイした当時はまだ学生で、初めてのノベルゲームだったこともあり、僕が受けた衝撃は凄まじかったが、今回はけっこう冷ややかに読んでしまった。んなこたぁない。

ZOO
タイトルが駄目だった。「ZOO」と聞くとどうしても「愛を下さい〜ウォウウォウ、愛を下さい〜ZOO」の「ズー」を思い出してよくない。主人公は動物園の看板を見るたびに自分が恋人を殺した事についての思いを深めるが、僕はこの言葉を聞くたびに辻仁成の悪い冗談を思い出してしまう。

SEVEN ROOMS
多摩美大のグラ展 でも似たような感想を書いたが、こういう作品に『CUBE』みたいって言ってしまう僕の言葉の浅はかさに問題がある。自分で小説を書いたりしないので、結局すぐに自分の経験から相対化して理解しようとする。悪い癖。僕はわりかし楽しんで読んだが、こういう作品群からもう一歩抜き出るラストを期待したい。

落ちる飛行機の中で
最初の禅問答のような会話はかなり妙で楽しかったのだけど、最終的な展開(つーか落としどころ)は平凡だったように思う。技巧一本でいくのか、心の問題を貫くのか、その辺がちょっと中途半端に感じた。

Posted by Syun Osawa at 15:58