bemod

2005年07月22日

イントゥ・アニメーション4 その4

前回のつづき

年をとった鰐(The OldCrocodile)

by 山村浩二/上映時間:12分53秒

今回、上映会に参加した一番の目的がこの作品。今秋に劇場公開が予定されている山村浩二さんの新作の先行上映ということだったので、見ることができてちょっと嬉しい。

本作はレオポルド・ショヴォー『年をとったワニの話』(福音館書店)という絵本をアニメ化しており、上映後に舞台上で山村さんが「絵本に忠実に作った」という話をしていた。あと、『ETV特集 ノルシュティン特集』の山村さんとノルシュティンさんの対談について少し触れられていた。山村さんが原作付の作品を作っていることについて、ノルシュティンさんが「安易に原作を選んじゃダメ」と言い、山村さんが苦笑いする場面があったそうだが、安易に選んだわけではないと舞台で否定されていた。

で、内容について。前回がテンションの高い和モノだったので、今回はわりとスカした感じ。バンドがアップテンポな曲でヒット出した後に、バラード作るようなノリでしょうか。原作を知らないのでどこまで忠実なのかはわからないが、ストーリーはかなり深い。共食いも愛憎劇も人間ってヤツも全部ひっくるめて否定も肯定もしない。シュールな内容。

アニメのほうはモノクロ手描き。波の描き方ばかり執拗に見ていた。細波をループさせているような印象だったが、どうなんでしょう? 蛸の動きはかなり蛸らしく、厳選された動きが効いていて、画面作りの上手さを感じさせる。

ただし、今っぽさで言えば、前回のアヌシーで観客賞をとったArthur de Pins『La revolution des crabes』の方が今っぽく、単純思考の僕には向いているなぁと感じた。こちらは横向きにしか歩けない蟹の一匹がある日、方向転換できることを知るというもの。こちらの作品もモノクロの一人語り作品でエッセンスは微妙に似ている。両者の決定的な違いは「日本人が作るフランスのアニメ」と「フランス人が作るフランスのアニメ」という事くらいしか見つけることはできない。そしてこの差がいかほどの差であるのかも僕にはわからない。

Posted by Syun Osawa at 00:33