bemod

2005年10月17日

犬狼伝説 完結編

画:藤原カムイ/原作:押井守/角川書店

犬狼伝説 完結編釣りキチ三平ならぬ犬キチ押井守の真骨頂ともいえる作品。小学校のときに読んだ『犬狼伝説』にまさか下巻が出ているなんて、灯台下暗しです。

押井守で困ったときは 野良犬の塒 さんのサイトへ。オリジナルかと思ったら実写映画『紅い眼鏡』が下敷きになってるらしい(こちらは未見)。しかも、映画『 人狼 』の公開時期にメディアミックス展開の一環で発売されたそうな。抜け目ないね、角川書店。

僕の世界観消費体験としては、実は『ガンダム』よりも『犬狼伝説』の方が圧倒的に大きい(二位はFFS)。首都警の成り立ちとか、特機隊の悲哀とか実生活に何ら関係のないことをが頭に刷り込まれてる。

首都警はファンタジーながら、実生活に近くて「本当にあるかも?」と子供の頃は思っていたけど、おっさんになると絶対に無い話だということがわかる。しかも、公安の扱いがわりと大雑把だなぁとか、首都警に配分される予算はどういう形で出てるの? とか、どーでもいいことがばかり考えて、結局「無い話」と決め打ちしてしまう。そもそも暴動起こしている人達に動機が無いからずっと最初から最後まで空虚(それを言ったら全部空虚かw)。

さらに今回はそんな首都警の特機隊がクーデターを起こすというトンデモな展開。参考文献を見ると二二六を意識しているみたい。ただ大義名分が無さ過ぎて(首都警解体でクーデター? んなアホな…)始めから終わりまで頭に入ってくるキーワードは「犬」だけ。ラストシーンでシェパードの群れが走っていくシーンなどは、押井守さんのオーガズムの瞬間という感じ。藤原カムイさんのあとがきにちょっと笑った。

この作品に関してはこれが制作者側の限界であり、ゴールが見えていたからこそ、やる気を奮い立たせ、何度となく落ちる落ちないの瀬戸際をくぐり抜け半年間耐えに耐えた労作なのである。ひとまずはご納得いただきたい。漫画はここで完結するが、押井さんの頭蓋の中にはまだまだ犬の物語が続くようなので、読者の方々は是非ともそちらの方に思いを馳せていただきたい。

たしかに押井さんの犬の物語は終わってないようで、本書の中にも登場する立喰師の話がアニメ映画になったり、『犬狼伝説』の続編が出たりもするらしい。やっぱ押井守は『ビューティフルドリーマー』じゃないですよ。間違いなく『犬狼伝説』の人です。そして裏側にある大きな物語は、「最初から空っぽ」という実に不思議な代物です。

Posted by Syun Osawa at 22:22