bemod

2005年11月19日

炎の筆魂

島本和彦/朝日ソノラマ/漫画

炎の筆魂歴史に残る短編集かも。

島本和彦的なハイテンション漫画にもブームがあって、長くやっていれば当然浮き沈みがある。数年のスパンでメジャー誌とマイナー誌を行き来する彼の漫画人生の中で、この作品はおそらく浮いている時期の作品ではないだろう(憶測です)。

でも、こういう作品群だからこそ採用されているような実験的な演出がたくさん見られて、漫画表現の枠を広げつつそれをエンターテイメントに消化しようとしている作家の心意気が感じとれた。また本作には『燃えよペン』と『 吼えろペン 』の間に描かれた「燃えよペン 第2部」という作品が収録されており、燃えペンファンとしては二重の喜びがあった。

根性戦隊ガッツマン

根性を笑った何ともいえない作品。「根性」だけを拠り所に戦隊モノを作ってしまうなど、誰が考えるだろうか? 最後の「イヤと言うほど根性を見せつけられ、もう平和になるしかなかった」という言葉が妙に深い。

ちょっとだけUターン

無茶な設定によって自然発生した素敵なシーンを発見。ヒロインの女の子が「わたしってなんのためにこの世にいるのかななんて――思ったりしてさ!! コジローくんはなんのために生きてると思う?」と言う台詞に対して「君のためにだよ…」と心の台詞で語りつつも実際には言わない。この台詞のために書かれる恋愛小説と比べ、本作品の設定はあまりに無茶苦茶。そして無茶苦茶がゆえに心に引っかかる。

アカデミ−

この作品も凄い。『逆境ナイン』の冒頭も相当なもんだが、こちらはもっと凄い。最初の13ページに出てくる台詞は「東京」「タクヤ!?」「あああ!!」「だめだっ!!!」「絵にならねぇ……」だけ。恐るべし。ラストの戦いもやたらとテンションだけ高くて、何となく正しいものを見たような気にさせられる(確実に間違ってます)。

燃えよペン 第2部

炎尾燃が漫画家の卵だった頃の話。3ページ目、原稿を持ち込んだ炎尾に対して放つ編集者の言葉で掴まれる。

編集者の格ってのはね! 何人の新人作家をつぶしたかで決まるのよっ
ついてこれない新人はバシバシ切っていくのよ私は!!

このあたりの展開だけなら『燃えよペン』にも『吼えろペン』にもある。この作品は短編という特性もあって、上記に作品よりも革新的な技法をサラッと用いている。それは漫画の中で描かれる漫画がそのまま大枠の漫画(ネーム画)になるという凄い展開を見せているところ。

また、ふだん熱く能書きをたれる炎尾燃は若い頃、どんな思いで漫画に立ち向かっていたか。その一端も見えるので、『吼えろペン』ファンにとっては、この作品を読むだけでも価値がある。

あしたのガンダム

『ガンダム』を『あしたのジョー』アレンジでパロッた作品。しかもアニメの原画風(つーか絵コンテ?)に描いていて、画面の効果や影の付け方などがわざわざ鉛筆で記されていたりする。パロってるのは『ガンダム』だけじゃなくて、セルアニメそのものをパロっているのだ。スゲェ!

Posted by Syun Osawa at 23:49