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2005年12月24日

ベトナム近代絵画展

2005年11月5日−12月11日/東京ステーションギャラリー

ベトナム近代絵画展久しぶりに美術館の帰りに図録を買った。ベトナムの近代化の渦に飲み込まれながらも、時代を見つめ、自分を見つめ、絵に打ち込んでいる画家たちの姿がビシビシ伝わってきたから。

今回展示されていた作品群は、第二次世界大戦中からベトナム戦争後までに描かれた作品が中心。そのため描かれた半分くらいは、戦争画であったり、ホー・チミン(ホーおじさん)の絵だったりする。第二次世界大戦の頃は日本からも従軍画家が大量に派遣された時期で、年譜を見ると1940年あたりから日本と仏印で交流があったようだ。終戦までの間、両国間で展覧会が開催されており、伊原宇三郎さんが絵画活動についての講演なども行なったりもしたみたい。彼らが描いた戦争画の立場と、戦前に日本の画家が描いた戦争画の立場は、当時闘う敵を同じにするという意味で実は同じ立場だったようだ。ところが、戦後の捉えられ方について、両者の評価は正反対になる。これはとても謎だ。

展示ブースに入場して最初に目に飛び込んできたのは、グエン・ド・クン《射撃訓練をするハノイのゲリラたち》(1947年)という作品。ゲリラの側から描いた戦争画なんて初めて見た。次にチャン・ヴァン・カン《湾岸地域の女性兵士》(1960年)とレ・フイ・ホア《協同組合の女性主任》(1970年)という作品。前者は女性兵士を描いている。後者は左手で子どもに乳をやりながらベンチで寝そべる女性が中心にいて、その傍らにはライフルが立てかけられている。いずれの絵も女性が戦場で戦っている事実を強い態度で描いている。今のところ、日本の戦争画でこのような作品を僕は知らない。

さらにファン・ケ・アン《タイバックの夕べの思い出》(1955年)は金を光の照りにあしらった美しい山脈の風景画。一番手前の山頂をゲリラの一隊が裸足で歩いており、中には少年兵士の姿もある。そして、チャン・チュン・ティン《少女と銃》(1972年)では少女が銃を持っている姿が、激しいタッチで仏字新聞の上に描かれていた。

ほかにも列挙したい絵はたくさんあるけれど、その前に図録を読んで勉強しないとわからんことが多い。あと、彼らが勝ちとった国家が社会主義の国家だということも注目したい。ベトナムの近代絵画を日本の戦前の前衛美術とかプロレタリア絵画と比べたときに、何が見えてくるのか? ちょっと興味がある。プロレタリア絵画に関してもほとんど見たことがないので、どんなものかもよくわかっていないんだけど…。

藤田嗣治関連のエピソード。《ヴィンモック村》(1958年)を描いたフィン・ヴァン・ドゥアンさんはパリに留学していた時、授業を見学に来た藤田さんに描写力を認められたのだそうだ。そしてドゥアンさんは帰国後、ベトナム美術協会創立者の一人となった。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 23:29