2006年05月08日
終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ
木村元彦/2005年/講談社/新書
『 映画『アンダーグラウンド』を観ましたか? 』(越村勲、山崎信一/彩流社)に続いてユーゴのお勉強。東欧は本当に奥深い。
友達の父親がユーゴ関係の翻訳家で、3月に少しだけお話をする機会があった。不勉強な僕は、コソボの状況が全くわからないことを告白し、その上でコソボの空爆についてどちらが悪いのかと尋ねた。その父親はこう言われた。
歴史には3層あり、一番下に人類という大きな時代の層があり、その上に江戸時代や奈良時代といった時代の層がある。そしてその上に空爆などの事件などの層がある。歴史はこうした視点で眺めなければならない。
僕は自分の浅はかな質問を恥ずかしく思った。
でも知りたい。今コソボで起きていることを。この本はその欲求に明確に答えてくれている。日本における東欧関係のアカデミズムに対する筆者の思いはこうだ。
私はユーゴ関連の解説本のほとんどが、現場に行かぬ学者の論文であることに忸怩たる思いがあった。
何がいいのか悪いのか、この本を読んでもわからず、より混乱してしまった。憎しみの連鎖が止まらない。この難しい状況に対して、EUは公平にジャッジすることなく、一方的にセルビア悪玉論を押し付けていることが悩ましい。
東欧の絡み合った民族の歴史はとても興味深い。短絡的には、爆発しかけた民族主義という爆弾を、社会主義が蓋をしていたという見方もできる。だがどうやら、それだけでは片付けられないらしい。とにかく知らないことが多すぎる。知ってどうなるというのはあるけれど。
Posted by Syun Osawa at 23:25