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2006年05月04日

映画『アンダーグラウンド』を観ましたか?

越村勲、山崎信一/2004年/彩流社/A5

映画『アンダーグラウンド』を観ましたか?セルビア人であるエンキ・ビラルの『 モンスターの眠り 』には、セルビア人の憂鬱が含まれていてた。彼の漫画を読んだとき、ユーゴに対して少しの知識も無い僕は、それらを上手く飲み込めなかった。

この気持ちは学生時代に『アンダーグラウンド』という映画を見たときにもあって、ユーモアに満ち、しかし複雑なユーゴのイメージが僕の頭を混乱させる。それは『ユリシーズの瞳』における「川を流れるレーニン像」といったストレートな悲哀とはちょっと違う。社会主義(つか、ティトー)が民族主義に蓋をしていたというだけの理解ではきっとダメなんだろう。この本を読んでようやく一歩を踏み出したと思いたい。

コソボへの空爆が始まったとき、なぜか僕はロンドンにいた。セルビア人がロンドンの国会議事堂の前に大挙して押し寄せ、クラクションを鳴らし続けながら抗議している様子は今でも覚えている。フニャフニャな自分との「生」に対するテンションの違いに驚かされたからだ。僕はセルビア悪玉論にも空爆にも反対だった。しかし、知り合いのイギリス人は「ミロシェビッチは許せない。空爆は当然」と言った。

そのとき空爆に反対だった自分の気持ちはよく憶えていないが、最近その理由の核となるものが薄らぼんやりと見えてきた気がする。なぜなら空爆後もユーゴには平和は訪れていないからだ。しかも空爆が民族の共存を決定的に不可能にしてしまった。岐阜県ほどの小さな場所で、複数の民族が本気で殺しあっている姿を想像して欲しい。『バトルロワイヤル』が現実に起こっているのだ。しかも映画と違ってこの物語は終わらない。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 23:30