bemod

2006年05月17日

ロシア・アヴァンギャルドと20世紀の美的革命

ヴィーリ・ミリマノフ/訳:桑野隆/2001年/未来社/A5

ロシア・アヴァンギャルドと20世紀の美的革命ロシア・アヴァンギャルドを勉強する入門書として、何も考えずにジャケ選したわりには最良の本だったのではないかと思う。図録もカラーでたくさん収録されているし、内容も簡潔明瞭。

ロシア・アヴァンギャルドって何? ってのは、この本を読んでも語りつくされているわけではないし、そもそもジャンルから入って、ジャンルの枠に固執し続けると泥沼に入ることはわかっているので、やんわりと眺める感じなのがいいのかも。

ここいらの興味は、小学校の頃に京都国立近代美術館にカンディンスキー展を観に行ったことから始まる。それ以来、ずっとカンディンスキーが好きで、この人がロシア・アヴァンギャルド界隈にいた人だというのも何となく知りつつ放置していた。

この本を読んだ程度の知識で妄想すると、ようするにロシア・アヴァンギャリストというのはアナーキストであり、権威からの遁走であり、革命的雰囲気が作り出したユートピアの幻影を追いかけた人達だったのかなと。いや、わかりませんけどね。著者も世界革命が成功しなかった時が、〈ユートピアの終焉〉つまりロシア・アヴァンギャルドが死んだときだと書いている。

ロシアでは1980年代までは、抽象画を創作することは謀反行為だったらしいし、ソ連誕生後は「社会主義リアリズム」なんてものが出てきて、プロパガンダ美術(目的美術)が社会を覆っていく。その隙間にカンディンスキーだったりマレーヴィチなんかが登場して歴史に名を刻んだわけか。カッコイイなぁ。

ちなみに、社会主義リアリズムについてこう説明されている。

造形芸術においては〈社会主義リアリズム〉は、自然主義の勝利やミメーシス的形態の確立のようにみなされがちである。だが実際には、要点は、理想的主題の勝利にあり、イデオロギーに奉仕しない主題のラディカルな排除にあった。主題が決まると、それに必要な形態が「自然とあらわれた」。詳細に練られた具体的な主題が、すべてを言い尽くしていた。

ロシア・アヴァンギャルドの先に社会主義リアリズムの芸術を見る人もいるが、僕はそのあたりは微妙な感じ。知らない事だらけなので何ともいえないけど、僕の興味がカンディンスキーからジャクソン・ポロック、サム・フランシスへと流れていくことから考えても、やっぱし、うーん。よくまとまってません。

全然関係ないが、きっこの日記 の人もアヴァンギャリストではないのかなと思うんだけど、どうなのかな? 本当に民主党のシンパなのかな?

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 23:07