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2006年08月25日

星空キセキ

監督・原作:松原俊和&渡辺明夫/2006年/日本/アニメ

星空キセキ「コミックスウェーブは21世紀のガイナックスなのか?」みたいなタイトルがパッと浮かんでしまったために、ずっとどーでもいい事を考えながら作品を見てしまった。

『アップルシード』(ガイナックス版のほう)とか『トップをねらえ!』あたりを思い浮かべながら、パンチラの有無を入念にチェック…みたいな中学生の頃の自分を思い出しつつ考える。よーするにシンプルなOVA(ビデオじゃないけど)作品。背景はCW美術部とクレジットされており、そういうことも含めてさらに考える。時代の中での位置づけを肯定的に考えていたのだけど…やめた。楽しく見たのでそれでいいや。

キャラが可愛く、ことみようじ さんの絵が好きな僕にはかなりツボ(特に髪型)。だからといって、こずえが旅に出る動機が「だってそう思うんだもん」であったり、その後の隔離された少年とのやりとりをすんなりやり過ごしたわけではないが、その点については自分なりにフィルターを通して見たので後述。

一番気になったところは、動画のクオリティ…ではなく、田舎への郷愁を誘う描写について。『釣りキチ三平』(矢口高雄/講談社)的な自然の描き方というのは、田舎を捨てて都会へ出てきた者の感情とシンクロする。矢口さん自身がドキュメンタリーの中で語っていたこととも繋がるが、若い頃に田舎で暮らしていると自然に対する無償の愛情ってなかなか湧き上がってこないものである。

なお、新海誠さんの代名詞とも言える濃紺とオレンジのグラデを配した夕日の背景画だったり、二人の言葉の掛け合いによって展開されるストーリーだったり、郷愁を誘う田舎の自然描写だったりと、作品の方向性が似ているのはご愛嬌といったところだろう。

新城カズマ『 ライトノベル「超」入門 』(ソフトバンククリエイティブ)にセカイ系は青春小説だと書いてあり、本作品に関してはそのようなフィルターを通して見た。そのためSF的な要素が綺麗に除去されてシンプルな男女の交流が浮かんできた。たしかに青春小説だ。

アニメのSF傾向は依然根強く、セカイ系はそこを超える作品群なんだと思うと、もしかしたら新海さんの次回作もスッキリと楽しめるのかもしれない。ちなみに本作は、ダブルネームという変わった仕様になっている。そして『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』のキャラデザでおなじみの渡辺明夫さんにとっても初監督作品であるらしい。

Posted by Syun Osawa at 00:13