bemod

2006年09月23日

ペレストロイカの終焉と社会主義の運命

塩川伸明/1992年/岩波書店/A5

ペレストロイカの終焉と社会主義の運命ペレストロイカからソ連崩壊への流れについての解説本。ゴルバチョフ書記長が求めたゆるやかな改革が、単純な善玉(資本主義)・悪玉(社会主義)論に短絡され、一気にまくられてしまった経緯を書いている。

社会主義はなぜ崩壊したのか? みたいな気持ちの悪い議論そのものには興味がなく(難しくてわからないということもあるが)、三つの段階で示されたこの時期の変革の流れが、日本の最近の流れと近いように感じられて面白かった。塩川さんは旧ソ連のオニコフという人の言葉を以下のように説明している。

第一段階では、まだ人々が根本的な社会変革という考えになじんでおらず、急進路線は広く受け入れられないので、穏健計画の思想が徐々に広まり、革命の準備に貢献する。また、第三段階は、すでに革命が達成された後の新体制建設の時期であるが、この時期には、過度に急いで変革を実行しようとして不安定化を招くよりも、実行可能な政策から着実に手をつけていくのが現実的であり、中道派が積極的な役割を果たす。しかし、その中間の第二段階にあっては、人々の意識は一時的に激しく分極化する。理性的な討論よりも感情の爆発が優越するからである。したがって、この時期には、中道路線は基盤を失い、孤立化せざるを得ない。

雑に日本に当てはめれば、第二段階は完全に小泉首相。僕が小泉首相を評価できる点は「失われた10年」的なくだらない言説を完全に過去のものとしてしまったところである。それくらいの問答無用の変革をもたらした。で、次は第三段階にあたると思うのだがどうだろう。

この本の主張で共感できるところは、ソ連崩壊後にも「ソ連型社会主義が滅びたからといって社会主義が負けたことにはならない」と言っている人達に批判を加えている点だ。塩川さんによると、この手の論は「負けたのは特定の型の社会主義にすぎない」「資本主義はそんなに素晴らしいものではない」「まだ社会民主主義がある」の三つに分類できるらしい。これら三つの主張を批判した後、次のように述べている。

今日、社会主義について語ろうとするならば、「ソ連型社会主義」の解体だけでなく、その改革を求めた種々の試みがすべて挫折したという二重の衝撃をじっくりとかみしめなければならない。

ちなみに今日の社会民主主義という概念は、マルクス主義から離脱する画期点となったバード・ゴーデスベルグ綱領(ドイツ社会民主党が1959年に採択した綱領)によるものらしい。つまりマルクス主義の別称ではないのだ。

(関連)松戸清裕『 歴史のなかのソ連 』(山川出版社)

Posted by Syun Osawa at 00:29