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2007年03月08日

不況!! 東京路上サバイバル

増田明利/2004年/恒友出版/四六

不況!! 東京路上サバイバルホームレスの鉛筆漫画を描こうと思い、資料として読んだ。この手の実録モノは大好きである(溝口敦さんのヤクザ関連などは特に)。

この本に登場する28人のホームレスは、年収600万以上を稼いでいた中間管理職(妻子ありも多い)が大半を占めている。事態をより深刻に見せるための恣意的なチョイスなのだろうという勘ぐりはそれなりに必要だと思われる。とはいえ、現実にそういう人は存在する。会社をリストラされ、精神的に不安定になり、家庭が崩壊し、就職先が見つからず蒸発。加えて病気や怪我などの不幸が重なるというのも、落下途中で歯止めが利かない原因となっているようだ。

で、この本を読んで改めて学んだこと。

「一度上がってしまった生活レベルは簡単には落とせない。」ということである。僕のように長らく貧乏をわずらっている人間にとっては何でもないこと、簡単に克服できることが、生活レベルを急激に下げてしまった人には大変な苦痛に感じられる。そのため、リストラ後に始めたバイトも長続きせず、追い詰められていく。興味深いのは、勤続年数が長い普通のサラリーマンであっても、そこからフリーター生活に入ると職を転々とするところだ。そして、ついには働く意欲がなくなってしまう。フリーター生活で踏みとどまることができないのだ。

ここで夏目漱石の「 道楽と職業 」が頭に浮かんだ。「現代の文明は完全な人間を日に日に片輪者に打崩しつつ進む」がゆえの不幸と言ってもいいかもしれない。虚勢を張ることはやめ、会社人間にならないように、重層的に生きなきゃね。

Posted by Syun Osawa at 23:24