bemod

2007年11月20日

ロミオ×ジュリエット(全24話)

監督:追崎史敏/2007年/日本/アニメ

ロミオ×ジュリエットGONZOが手がける古典のリメイクアニメ。アニメに限らず古典のリメイクって企画として成立しやすいんだろうか? しやすいんだろうなぁ。

ぶっちゃけ『 幕末機関説いろはにほへと 』に続いてこの作品を観てしまったことを少し後悔している。どちらの作品も第1話を見る限り、とても面白そうな予感があったんだけど…。

僕が楽しみにしていたポイントはすごく単純で、貴族のロミオとジュリエットが時代の波に翻弄されながらも最終的に愛を選択するということだった。それは世界の平和を願うとか、市民の生活向上を願うというものではない。この作品を描くにあたって、戦争と平和は少しテーマが大きすぎたのではないか。結局、ラスト近くでセカイ系な展開にもっていってるし、全体的に中途半端な印象を受けてしまったのが残念だった。

以下、各話メモ。感情まかせに書き殴っていることをご容赦下さい。

第01幕 ふたり 〜出会わなければ〜

男装の麗人、隠された過去の記憶、衝撃的な出会いと恋愛アニメの王道が矢継ぎ早に投入される。テンポがよいので気持ちよく引き込まれた。ジュリエットの髪型は男装のときと女装のときでは違うが、長い髪をあのような形で短くおさめることができるのだろうか? まとめ髪の絵が難しいから…とかではないよね。

第02幕 約束 〜思ひ出の香り〜

早くもロミオとジュリエットが恋心を抱くようになった。いずれ二人は愛し合いつつも一方で戦うというベタな展開になるに違いない。ジュリエット役の水沢史絵さんの演技をシンプルに楽しみたいので、そういうまっすぐな展開を期待している。ところでジュリエットはロミオと再開したとき「ロミオ様」と呼んでいたが、別れた後に心の声では「ロミオ」と呼んでいた。なにか理由があるのだろうか…。

第03幕 恋心 〜残酷な悪戯〜

ジュリエットは生き延びるために男装をしていた。思い悩むジュリエット。赤い風としてロミオと再会し、そこでロミオが宿敵モンタギューの人間だということも知らされる。それにしてもあの仮面じゃバレバレだろ。ロシアの特殊部隊みたいなのにしないとさ。王道な展開に安心感あり。ピンチは少なめ。

第04幕 恥じらい 〜雨に打たれて〜

なにこの潮騒みたいな展開w ボブのときのオーディン(ジュリエット)とロミオが二人でペガサスに乗っているとき、ロミオはオーディンのことを男と思っていて、雨宿りしたところで初めてオーディンがジュリエット(女)だと知る。この昼ドラ的展開はなかなか新鮮だ。ヨン様にハマっているおばさんになった気分。

第05幕 疾風 〜燃ゆる覚悟〜

前回の潮騒的な展開以降、一気に不審の目になっている自分に気づく。この感覚は『 幕末機関説いろはにほへと 』と似ていて先行きがちょっと不安。時代に翻弄されつつも真実の愛を貫くという大枠について、翻弄されている様子をいかに描き、その中で真実の愛をいかに描くのか。明らかに悪い奴である大公が邪魔してそのあたりがまだ見えてこない。

第06幕 希望 〜託された明日〜

医者のアイリスが赤い風の身代わりとして死んだ。落ち込むジュリエット。アイリスの家族が街を脱出するをはかるも、追っ手が迫っている。助けに入るジュリエット一派。そこへ新たなキャラクター登場。若干中だるみの展開だった。ところで、ジュリエットは強いのか弱いのかどうも判然としない。全体的に行き当たりばったり感が強く、物語に引き込まれる前に「おいおい」と突っ込みを入れてしまう機会が増えてきた。本来はそういう見方はしたくないのだけれど。

第07幕 ぬくもり 〜今だけは〜

二人がついにチューして愛を確認。街中での追いかけあいからの展開は王道ともいえるが、個人的にはあの場面が30分すべてであってもかまわない。もっともっと内言を大事にして、狂おしいほどにお互いへの愛で思いを募らせて欲しい。そうでないと、そこからくる憎しみや身勝手さみたいなものにも感じられない気がするから。設定重視の昨今のアニメは完全にキャラの標準化なる毒牙にやられているためか、そのあたりのパンチ力がイマイチ弱い気がする。

第08幕 甘え 〜正義とは〜

ドラマがなぁ…薄いなぁ。もっと軽薄でいいと思うのよ、ジュリエットって。キャピレット家の生き残りであるにもかかわらず、ロミオのことが好きで好きでたまらない。自分がこんなことではいけないと何度も自問しながらも、ロミオへの思いが何よりも優先されてしまうという…。設定が重視されているためか、話の筋はそれなりにわかるんだけど、なんか…盛り上がらんな。自分的に。

第09幕 甘え 〜正義とは〜

ヤバい…。決定的に自分の嗜好から外れてきた。貴族(ロミオ)を貴族(ジュリエット)が撃つ。しかし撃った側の貴族も民衆によってその地位を引き摺り下ろされる。時は貴族社会の終わりを告げている。ギロチン台に並べられるロミオとジュリエット。そこで始めて二人は…とかじゃなくていいんで、タカラヅカ的な華やかさを期待してるわけです。

第10幕 泪 〜貴方と逢えて〜

ついに「あなたはどうしてロミオなの?」が出た。うーん、王道ゆえに難しいんだろうなぁ。キャピレットもモンタギューも貴族だし、議会も存在するし、力関係がどうも判然としない。これから明らかになるのだろうか…。一番の疑問は追われているはずのジュリエットとロミオが携帯電話ない世界であんなにちょくちょく会えるのだろうかということ。そして、あんなに会えるならエッチくらいしろよとか、いろいろ思う。愛してる同士なんだし。

第11幕 誓い 〜朝陽の祝福〜

二人の逃避行、森へ。小さな恋のメロディをいい大人がやってる感じか。二人にとって生涯で一番幸せなときがこの回らしい。つくられた世界観を開陳していく過程を物語としているから、状況が視聴者に明らかになった後、今回のようにぐだぐだの展開になってしまうのだろうか。ところで、あのペガサスの羽の位置と鞍の関係が凄く曖昧だと思うのは僕だけだろうか? どう考えても翼がある関係上二人乗りは不可能だと思うし、馬のバランスを考えれば羽根は前足の上あたりになければならず、その時点で一人乗りさえ難しいはず。アニメーターの人は描きながらそう思っていたに違いない。

第12幕 安息 〜このままで〜

ぶっちゃけ、今回が一番しんどかった。理由はいろいろある。二人での逃避行が自暴自棄なものではなく、逃避先でさっそく堅実な生活を始めていること。これまでのことをまったく置き去りにしていること。池の辺りの演出が不可解だったこと。村が焼き討ちにあい(敵国でもないのに?)、村人を救うため無謀にも二人で突入すること(そして当たり前のように捕まる)。すっかりよくわからん感じになってしまった。結局のところ、ジュリエットが捕らえられて次へという回だったんでしょうな。

第13幕 脈動 〜導かれて〜

ジュリエット奪還作戦。軽い内乱状態に。いよいよクライマックスへ向けて、二人の愛は、社会の秩序はどうなるのか? という展開。

第14幕 重責 〜この腕の中で〜

この作品って何話まであるんだろう…。ジュリエットは逃げて、ロミオは採掘場の責任者に。そこで、病弱な罪人の死を見る。貴族と平民の間にある深い溝を感じるロミオ。テーマが大きいだけに、セリフがどれも安っぽく感じられてしまう。「俺の悪口はいいが、お母さんの悪口だけは…」みたいな。うーん。うーん。

第15幕 自我 〜進むべく道〜

ロミオが鉱山での崩落事故をきっかけにして、罪人たちから信頼を勝ち取る。1エピソードで罪人たちの積年の恨みが晴れるのなら世界の紛争地の問題などとっくに解決しているのではないだろうか。いずれにせよ戦争と平和を描くのは誰がやっても難しいのだ。今回からエンディング曲が変わった。こちらのエンディング曲のほうが作品にもあっているような気がするしいい感じ。

第16幕 ひとり 〜いとしくて〜

ようやくハーマイオニ(ロミオの婚約者)の嫉妬がジュリエットに向かうようになった。で、女同士の対決。僕的にはもっと陰湿で陰険でジトジトしていてほしいと思う。そもそも恋愛アニメというのはこういう微温的なものなのかな? 初めてなので、そのあたりはよくわからん。

第17幕 暴君 〜漆黒の因縁〜

大公の出自が明らかになった。大公の父親もキャピレット家で母親は娼婦という。やはり、「設定を開陳していく過程=物語」だとこの作品の脚本家はとらえているのかもしれない。ジュリエットもロミオの愛ゆえにモンタギューに対して「憎しみはない」とまで言ってしまった。個人的には、ここで煩悶して欲しいんだが。

第18幕 志 〜それぞれの胸に〜

いつの間にか三文芝居みたいなのを始めることになっていて、その開演前にジュリエットがロミオに会いに行く。で、会ってキスして終わり。ピンチや苦難を乗り越えて、乗り越えて、やっと出会えたあなた、でも背負うものが多すぎてあなたを正視することができない。それでも募る思い。葛藤。不安。…みたいなのがね、何にもないんだもんなぁ…。エンディングで「本当に実らぬ恋なのですか?」と言ってるが、かなり簡単に実ってるしなぁ。

第19幕 継承 〜我こそは〜

劇中劇をやるアニメは地雷か? …てなことはさておき、ジュリエットがもう一度赤い風になることに。キャピレット家の末裔としてジュリエットが登場。顔はもう隠していないようだ。ロミオって何もできない奴じゃないのに、ジュリエットがコレだけ人気者だと立つ瀬ないな。

第20幕 使命 〜揺るぎなき一歩〜

いよいよクライマックスへ向かう。それにしてもピンチがない。モンタギューは一応独裁者として君臨しているが、追い詰められ滅び行く方向へベクトルが向いていることを視聴者に示してしまっている。この状況では逆転は起こらないし、順送りではドラマ部分が弱くなってしまうのではないか。あと、地震は『コナン』のように不吉な前兆として始めの頃から起こしておくべきではなかったか。そして、一番の疑問はロミオやジュリエットが創意工夫やたゆまぬ努力で平和を勝ち取るわけではなく、抗えぬ運命を自らが受け入れた瞬間に物語が簡単にエンディングを迎えてしまう点だ。これはこのアニメだけに限った話ではないが。

第21幕 掟 〜女神の抱擁〜

モンタギューは自分の城下町を火の海にしているが、そんなことはあり得るだろうか? 数千人規模の残酷な処刑というのならまだしも、大火では秩序も糞もない。しかもモンタギューは誰の目から見ても追い詰められている。悪役がすでに追い詰められてるって何か変だよなぁ。ジュリエットはいつの間にかエスカラスとの絡みで世界を救う鍵になっている。セカイ系かよ…。

第22幕 呪縛 〜荒ぶる激情〜

大衆を前にジュリエットが言う。「剣など必要としない新しいネオベローナをつくろう」と。これはおかしい。今回の騒動はたんに権力が市民へと委譲するに過ぎない。で、モンタギュー死す。このアニメって恋愛アニメのはずなのに、僕にはロミオとジュリエットの関係は随分と冷めたものになっているような気がする。これでいいのだろうか…。

第23幕 芽吹き 〜死の接吻(くちづけ)〜

ジュリエットがネオベローナを救うために死ぬんですと。だから、ロミオとお別れをした。ロミオの兄はロミオに自分の気持に正直になれと言う。え? そうなの? ロミオとジュリエットの関係が変だ。どういうことなんだ? ここにきて恋愛の側面が強調され始めた。ここの展開は、むしろ逆だろう。ジュリエット一人の死で世界が救われるなら、騎士たるものそれを止めるべきではできない。だから僕も一緒に行くよ。じゃないの? なのに、二人で剣でガンガン戦っておりました。実に変な脚本。というのも、ロミオの言い分はジュリエットが世界の命運を握っているわけじゃないという物語の根本を否定をしているからだ。

第24幕 祈り 〜きみのいる世界〜

ロミオが死亡。ジュリエットはやっぱり世界の命運を握っていたらしく、ロミオと一緒に死ぬことに。ものすごく感動するはずの場面なんだろうけどね、2ちゃんねるの該当スレを眺めると僕と同じような微妙な思いで最終回を観た人も多かった。いやほんと…「世界がエスカラスによって支えられていたことも、ネオベローナが宙に浮いていたことも知らなかった」というセリフにはこけたなぁ。最後の最後、街が平和になったというよりも、みんな物分りがよくなっただけで、残された人々の白々しいセリフからは去勢された人間にされてしまったようにさえ思えてしまった。

Posted by Syun Osawa at 23:25