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2007年12月13日

「戦争漫画」傑作選(全2巻)

手塚治虫/2007年/祥伝社/新書

「戦争漫画」傑作選何故に新書?

大塚英志さんが何かの本(忘れた)で、手塚さんの漫画表現は記号的であるのに、武器だけはリアルに描いていると指摘されていたことを思い出した。たしかにそうかも…と思って読みすすめていたんだけど、結局のところ単純に劇画ブームの影響が大きいのかもと思い直すに至った。

手塚治虫さんが実在の戦争をネタにして多くの漫画を描いたのはよく知られている。特別な思い入れがあるのだろうということは想像がつくのだが、全編を通してあまり面白く感じなかった。練られたストーリーもあるが、反戦というよりも戦争のトラウマが描かせているように感じるのは、世代の問題かイデオロギーの問題なのかはよくわからない。まぁ…どっちもなんだろうけど。

トラウマを感じさせるのは、兵士の描き方。兵士がとてつもなく極悪非道な振る舞いをするのだ。レイプした後に殺したり、とんでもない奴らばかり描かれる。そして、徹底的にリアルな描写で残酷な死を描いている。これらは、戦争の恐ろしさを伝え、戦争を起こそうという気持を起こさないための教育的な観点から描かれていることは明らかだ。戦争を経験した作家の反戦に対するアプローチとしての芸術表現。その典型といえるかもしれない。

とはいえ、『はだしのゲン』などと比べればエンターテイメント性が強くなっている。漫画の中で描かれる戦争にたいするアプローチは変遷しているはずなので、そのあたりについてはちょっと調べてみたい。その手の評論本はたくさん出てそうだけど…どうなのかな?

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:50