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2007年12月27日

「陰山学級」学力向上物語

陰山英男/2003年/PHP研究所/四六

「陰山学級」学力向上物語百ます計算のCMをテレビで見ると小学館がどれだけ陰山メソッドに力が入れているかがわかる。実際に売れているのだろう。

陰山さんって進学塾の先生かと思っていたら、公立小学校の先生だったみたい。実際に小学生の子どもを持っているくらいでないと、そんなことすら知らない人も多いのではないだろうか。

この本は陰山さんが小学校教員だったころの自伝的な内容になっている。ゆとり教育を重視する教育現場で「読み書き計算」の重要性を訴え、実施していた体験談が書かれている。政府がゆとり教育の方針を転換しつつある中で、彼の試みはまさに実を結んだ。そして、その実績が認められて今は立命館大学の教授になっているそうだ。

ただ、本を読み進めていると世間(というか僕)が抱いている印象とちょっと違った側面が見えてくる。というのも、彼が小学校で行っていた百ます計算を中心とした学力重視の取り組みは、学校全体での取り組みだったからだ。陰山さんも本の中で再三そのことについて触れているが、残念ながら多くの人はそれを知らない。結果的には百ます計算も陰山さん一人の功績であるかのように一人歩きしていく。その結果、彼は追われるように広島県の校長になった。

このことは「読み書き計算」の是非とは関係がない。

職員室の中での問題だ。もともとアナウンサー志望だっということからも想像つくように、表舞台で活躍したいという欲望は人一倍強いのだろう。前に出て行く彼だけが注目を集め、多くの人が彼一人の功績と誤認するのも彼の問題ではない。ただ、百ます計算をめぐる一連の流れは、彼一人の功績として歴史には刻まれることになるだろう。なんか似たようなことが、大江秀房『 科学史から消された女性たち 』に書かれてたな…。ちょっと複雑な気分である。

ちなみに、百ます計算がニセ科学であるかどうかは不明。

Posted by Syun Osawa at 00:19