bemod

2009年02月08日

ルポ 最底辺

生田武志/2007年/筑摩書房/新書

ルポ 最底辺やっぱし、ルポが一番好きだな。

最近は社会のモードを語るような本ばかり読んでいたこともあって、生々しさという点では物足りないところがあった。逆にこの本には、著者自身が20年近く釜ヶ崎で日雇い労働者をやっていることもあって、生々しさしかない。そして、知らないことばかりで本当に勉強になった。

例えば、釜ヶ崎の結核発病者の発病率がカンボジアや南アフリカの2倍近くあることとか、野宿者に生活保護を受けさせてその中間マージンを抜いているNPO団体がかなり大規模に活動している話など。他にもホームレスの人が売っている『ビッグイシュー』は個人的には成り立っていないんじゃないかと疑っていたんだけど、あの仕事に関わった人の約4割が野宿生活から抜け出しているそうな。

最底辺の生活とセーフティーネットの問題は考えさせられるところが多い。日雇い派遣の問題も日雇い形式だから悪だというならば、釜ヶ崎の労働者も基本ずっと日雇いだったりするわけで、単なる派遣批判を繰り返しても問題がすぐに解決するようには思えない。ただ、著者が指摘しているように、釜ヶ崎の日雇い労働者には横のつながりがあるが、日雇い派遣の人たちは基本メールによるやり取りのみで横のつながりがないというのであれば、今の日雇い派遣の人たちはかなりの孤独感を抱いているのではないか。

この問題は今に始まった問題ではないが、家族や親戚が担ってきた自前のセーフティーネットが機能し難くなった今、ギリギリのところまで追い込まれる前に踏みとどまれる場所をどのように構築するかが大きな課題だといえる。鈴木謙介は『 サブカル・ニッポンの新自由主義 』で、そうした場所を「ジモト」に見つけていたが、それだけではまだ足りなくて、年齢や趣味を超えたところで踏みとどまれる制度的な何か…うーん、これ凄い難しいね。

Posted by Syun Osawa at 01:09