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2009年06月22日

本田宗一郎 夢を力に ― 私の履歴書

本田宗一郎/2001年/日本経済新聞社/新書

本田宗一郎 夢を力に ― 私の履歴書本田宗一郎自身が書いた自伝的エッセイにライターが書いた本田宗一郎像をプラス、さらに本田宗一郎名言集を加えたごった煮本。日本が生んだ偉大な天才技術者の横顔をサクッと知るのが目的なら、十分にその役割を果たしてくれると思う。

この手の本を読むと、僕の脳内で勝手にイメージされていた本田像がちょっと違っていたことに気づかされる。僕は本田は10代ですでに成功していたと思っていた。だから天才なのだと。しかし、本田が本田技研工業を設立したのは40代なのだ。もちろんそれまでに自動車修理で成功していたわけだが、高等教育を学ばずに若くしてその世界に入ったことを考えると、下積みの時代は結構長い。これは松下幸之助『 物の見方 考え方 』を読んだときにも感じたことだ。

アイデア一発で財を成したわけではなく、しっかりした技術に裏打ちされた思考の積み重ねによって彼らは財を成したのである。その道のりは短くないし、平坦でもない。しかし彼らは常に前向きに、振り返らず、立ち止まらず、その道を進み続ける。

戦前の不況から高度経済成長へと続く景気の上昇トレンドが、彼らの信念を支えていたという見方もできるかもしれないが、やはりそうではないだろう。誰にだって未来のことはわからない。前の見えない草むらをいかに進むか。その態度が重要だと思うのだ。

…と、熱っぽく書いてみたのは、自分自身の態度と本田の態度は正反対だからだ。本田は本の中で若者の若年寄のような態度を批判している。また、技術者でありながら最も大切なのは人間関係であり、そのためにはジョーク(笑い)も必要だと言っている。また独りよがりも戒めている。職人だから自分の道を黙々と追い続けるというのではないところは宮崎駿さんとも重なる部分がある。いわゆる巻き込み形で、どんどん世界を押し広げていけるところが似ていると思う。

最近は「閉じた世界」とか「閉塞した社会」なんて言葉を言う同世代の人間も多いけど、世界を押し広げていくことの重要性については、資源や土地が有限であるといった物質的な意味を超えて考えなければいけない課題だろう。話が逸れた。

Posted by Syun Osawa at 01:17