bemod

2009年07月14日

反=文藝評論

小谷野敦/2003年/新曜社/四六

反=文藝評論小谷野敦さんの本は面白い。

僕はどちらかというと理系であり、本もそれほど多く読んでこなかった。だから文学作品を横断的に取り扱ったエッセイ本などを読む機会などほとんどなかったのだ。そういう人間が社会人になって、日和って文藝評論の本でも読んでやるかとページをめくると、途端に自らのバカさが露になってしまう。過去の著名な評論家の本など読んだ日には難解でついていけなくなるのだ。これはキツい。

その点、小谷野さんの本はわかりやすい。少なくともわかりやすく書かれているように見える。そういう意味で彼の本は、僕のようなバカを少しだけに教養っぽいものを身につけさせてくれる啓蒙書としてそこそこ機能しているように思う。『 バカのための読書術 』もそんな感じの本だった。もちろん、そうしたわかりやすさ以上に、ブログや2ちゃんねるの関連スレから醸し出すガチの香り(どこか怪しげなんだなこれがw)にそそられている事は言うまでもないのだが…。

最近、小谷野氏は村上春樹の最新作『1Q84』をめぐって東浩紀氏とブログで揉めていたが、本作にはその議論へ至る前段階としての村上批判が掲載されていた。村上の小説には都合のいい美男美女しか出てこないという非常にまっとうな、突込みをしていて、これは彼のブログなどでもよく書かれていることだが、とても納得できる。漫画にしてもアニメにしても、昔は不細工なキャラがいっぱいいたはずなのに、今はほとんど登場しなくなっている。

あと、ロマン主義者とポストモダニストについて興味深いことが書かれていた。

事実など重くない、テクスチュアの戯れこそが文学なのだ、と。ここで不思議なことに、ロマン主義者とポストモダニストが手を握る。『心中天の網島』も、『女工哀史』もともに表彰である、私たちは表彰の背後に現実があるかのように仮想しているだけだ、と言うポストモダニストは、結果としてロマン主義を容認することになろう。

これなんて、東浩紀さんが昨年、南京事件について書いたエントリが大炎上した問題にも繋がっているように思う。最近は開き直ってか何なのかロマン主義もまた流行してるみたいだし、このあたりの問題系が2010年にも続いていくことになるのかな?

Posted by Syun Osawa at 00:18