bemod

2009年08月06日

戦争画の相貌 ― 花岡萬舟連作

2009年6月15日−7月11日/早稲田大学會津八一博物館

戦争画の相貌早稲田って大学の中に博物館があるんだ…さすが。凄いねぇ。

今回の画家については、正直「誰?」という感じだった。購入した図録を見ると、どうやら従軍画家ではないらしい。戦争画に影響を受けて描かれた戦争画といった感じか。展示されている作品のほとんどは1937年〜1939年に描かれている。戦争画が最も隆盛を極めた時期がいつなのか僕にはわからないが、これらの絵が描かれた時期に、戦争画という絵が一つのジャンルとしてはっきり認識されていたことは間違いないだろう。そして、そういう絵を心情的に描きたいと思わせる雰囲気が漂っていたに違いない。

ただ、戦争を描いた絵というだけならば、いつの時代にもある。漫画であれば、今なお多くの漫画家の手によって過去の大戦の様子が描かれている。そうした作品と今回展示されていた作品にどれだけの違いがあるのかというと、リアルタイムであったかどうかという違い以外のものを見つけるのは難しい。目的が日の丸を描くことにあったとするならば、国旗が多く掲げられた絵を描く人など今はほとんどいないので、そういう違いはあるかもしれない。

展示室には横山大観《旭日(国民精神総動員)》が展示されており、これは黄色地に朱色の日の丸を描いたものだった。黄色地をよく見ると、日の丸を中心として放射状に白い線が薄っすらと延びており、日の丸が光を放っているように工夫されている。これなどは日の丸が日本国民の国威発揚のための記号として機能しているように思える。

花岡氏の絵を見る。

他の戦争画で見たような構図の作品が多いのは、おそらく写真から描いているせいだろう。従軍記録画家も実際に見た状況をリアルタイムに描き出すというよりは、写真を誇張して描いていたケースが少なくなかった。ここに戦争画のひとまずの限界を見ているのだが、この話はひとまず置いておこう。構図だけに注目するならば、日清戦争時代の戦争画(浅井忠とか…)やパノラマ絵画のような印象が強い。

最も印象に残ったのは《忠魂永へに闘ふ》という作品だった。戦死した仲間を燃やして、その火を囲んで黙祷する兵士達の姿が描き出されている。この絵に似た作品も見た記憶(忘れた)がかすかに残っているが、他の作品と少し趣が異なるのは煙の中に天にのぼっていく兵士達の姿が描かれていることだ。当時の死生観では、あの世は天にあるのか? とか、どうでもいいことを思ってしまった。

ところでこれらの画は、一般の方からの寄贈らしいのだが、その人のプロフィールを見ると慶応卒とある。どうして慶応ではなく、ライバル校の早稲田に寄贈したんだろう? これも、どうでもいい疑問だな。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 01:32