bemod

2009年09月03日

サマーウォーズ

監督:細田守/2009年/日本/新宿バルト9

サマーウォーズ映画館に観に行く作品は、前情報を一切入れない主義なののだが、これが災いした。チケットショップで『サマーウォーズ』のチケットを買おうとしたら、どの店もすべて売り切れており、僕の中で作品のハードルがかなり上がってしまったことも原因だと思う。まさか人工知能がアレだったりするような、ハリウッド映画並みのザックリした内容だとは思わなかったからなw うーむ。チラシに描かれた貞本イラスト恐るべし。

作品はわりあい単純な内容。セカンドライフ的なサービスを世界中の人々が利用しているということが自明化された世界での物語だ。このバーチャルな世界は現実の世界と密接に繋がっており、人間のコミュニケーションの場として今や不可欠なものとなっている。そんな虚構空間を破壊する人工知能が登場し、世界は大混乱をきたすという話。

この作品で描かれている世界は、今の技術でもそれなりに実現可能だと思う。でも、僕達の社会がそうした仕組みを歓迎していないことは、セカンドライフの失敗を見れば明らかだろう。また、中央のメインコンピュータに情報が集積されるようなシステムによって世界の情報を管理するという想像力にも若干の疑問がある。そういうNapster型のネットワークは今やP2P型に置き換わられている。そもそも、現在のグローバリゼーションは個人(人工知能を個人とするならば…)の力ではどうにもならない状況を指しているわけで、集中管理でどうにでもなるような世界観というのは、物語を駆動させている装置としては少し古いのではないか。

そのほか、科学的な考証の面でも気になるところが多かった。大気圏に突入しても燃え尽きない人工衛星も気になったし、もしも原子力発電所に燃えカスのような人工衛星が落ちたとして、はたしてそれが物語のクライマックスを引き受けるような大惨事を起こすかということも疑問だった。あらかじめそこに墜落するとわかれば、制御棒を突っ込んで、安全装置を全て起動させれば原子炉の活動そのものを使用不能にすることができるわけだし…。チェルノブイリのような大爆発が起きるとでも思っているのだろうか?

もっと残念だったのは、家族の描き方で、言いたいことは理解できるのだが、そこが十分過ぎるのだ。コンセプトを強く打ち出し過ぎていて、やや説教臭く、僕には少し重たく感じられた。あと、主人公の2人の恋愛の行方についても、誰かに促されてする恋愛というのは、あまり感心しない。細田監督の前作『 時をかける少女 』では自発的な恋愛として描いていたところを、本作では作品の中心に家族を据えたために、「夏希をよろしく」って感じでくっつけられるという展開になったのは残念だ。相手が凄く可愛い女の子だからいいけど、普通はそういう風にはならないでしょ。逆にそういう事でくっつけられたことによる軋轢のほうが、より今日的なサマーウォーズだとも思うので、もしも続編があったとして、望月峯太郎『お茶の間』的な方向に展開していくのなら、次も劇場に観に行ってもいいかなと思う(絶対にないだろうな…)。

Posted by Syun Osawa at 00:10