bemod

2009年09月09日

ふるさと ― JAPAN

監督:/2007年/日本/アニメ

ふるさと ― JAPANNITABOH 仁太坊 ― 津軽三味線始祖外聞 』と同じ監督が制作した作品。WAOグループの代表取締役が自ら映画監督をつとめていることが引っかかり、監督である西澤氏の Wikipedia を見てみたら、京都大学美学美術史学科卒とあった。事業家として名を馳せながらも、創作への情熱をずっと抱き続けていたということだろうか。

物語の舞台は、戦後10年が経過した頃の日本。核家族化、個人主義化が進む現在と地続きでありながら、家族や地域のコミュニティがまだ維持されていた時代を描いている。早い話が、僕の親世代に直撃の作品である。意地悪な見方をすれば、『ALWAYS 三丁目の夕日』において散見されたようなベタなノスタルジーに対する揶揄はこの作品にも当てはまってしまう。

さらに、子役たちの恐ろしいまでの棒読みも手伝って、小学生の頃に見せられた教育映画的な雰囲気も感じられた。ただし、監督自身が教育事業を行っているわけだから、教育的な訴え、コンセプトを明確に打ち出しているという風に捉えれば、この事はむしろプラスに考えたほうがいいのかもしれない。

そもそもこの作品に描かれる時代というのは、藤子不二雄『少年時代』のような戦時下の暗い部分もないし、現代日本の不安定さからくるヒリヒリ感もない。こういう時代を知らない僕は、この手の映画を見ると「良い時代だったのかもしれないけど、中年親父のノスタルジー強要は勘弁して欲しいわ〜」というアイロニカルな態度をとりがちだ。ただ、そうしたアイロニカルなフィルターは今回は外すことにした。

で、普通に映画を観ていたら、今の作品にあまり感じられないまっすぐさがあって、胸にズシンと来たのだ。この作品に登場する子供達のまっすぐな感じというのは、本来普遍的なもののはずなのに、今はそれを描き難くなっているような気がする。そして、それは「ノスタルジー勘弁」という揶揄で片付けられない問題を提示しているようにも思える。

Posted by Syun Osawa at 00:28