bemod

2009年09月10日

女王蜂

監督:市川崑/1978年/日本

女王蜂京極夏彦『 姑獲鳥の夏 』を読んで、なぜだか無性に金田一シリーズを観返したくなった。横溝正史の金田一は超常現象やオカルティズムは排除されているから、京極作品からは遠い存在にも思えるが、僕の少ないボキャブラリーが類推の限界性を超えて誤作動を起こしたのだ(作品の時代背景が似ていただけw)。

過去に金田一耕助を演じた役者は数多いが、僕にとって金田一は石坂浩二以外には考えられない。市川&石坂コンビの金田一シリーズは過去に何度か通して観ているので、他のシリーズに浮気しようかとも思ったが、結局、黄金コンビによる定番シリーズを観返すことにした(と言っても、わずか数本だが…)。

映像はいい感じにレトロで、しかし心理描写などで当時の斬新な演出方法を巧みに使用しており、レトロフューチャー的な意味でもかなり面白かった。このシリーズはガチに僕の感性にマッチしてると思う。昔はB級スプラッタ的な楽しみ方とかもできずに、かなりベタにビビリながら観ていた本作も、今回は京極作品の影響もあってかミステリー部分に主軸を置いて観ることができた。

横溝作品にはたしか本格っぽいロジックがあったと思うし、今回もそれはあったと思う。ただ、今回は犯人が最初からある程度見えていて(というか絞られていて)、謎解きの部分以上にドラマの部分で引っ張ろうとしていたようにも思えた。特に後半、結構早い段階で犯人の存在は明らかになって、しかもその犯人も死んでしまう。そして、犯人の死後、犯人の殺人の動機をエピソードで回想するということに時間が費やされており、その点が少しだけひねったつくりになっていた。そのため、家族のあり方という今にも通底するようなテーマが余韻として残って、切なくて味わい深い作品に仕上がっていたように思う。

ところで、DVD特典としてついていた予告動画を見ると、そこで使われているテロップの使い方が『エヴァンゲリオン』とソックリだった。あの演出はこの時代(つーか、このシリーズ?)のパロディだったんだな。もっとも、この予告動画自体がもっと古い時代の映画のパロディだったのかもしれないが…。

Posted by Syun Osawa at 00:11