bemod

2009年09月16日

犬神家の一族

監督:市川崑/1976年/日本

犬神家の一族市川&石坂コンビの金田一シリーズ第一作。後にリメイクされるだけのことはあって、さすがにこれは面白い。撮り方が妙に新劇風で、古きよき日本映画とその時代にあった斬新さみたいなものが混ざり合っていて、なかなか新鮮だった。音楽も当時流行だったであろうフリージャズっぽいドラムを効果的に使用している。

女王蜂 』ときも感じたが、犯人が明らかになってからの余韻が結構あるのが、この監督の特徴なのだろう。2時間半あるうちの、後半20分くらい。僕が昔よく観ていたハリウッド系のサスペンスだと、最後はドミノ倒しのように一気のネタバレでサクッと終わるのに、そこで丁寧に謎解きをやっている。しかもその謎解きの過程で複雑な人間関係や因習といったドラマの深い部分に切り込んでいて、泣ける作品に仕上げているのはさすが。

この手のサスペンスもののお約束といえばエロシーン。その性描写がちょっとだけ引っかかった。映画に登場する三人の孫(ヒロインと結婚すれば遺産を相続する権利が得られる立場)のうち二人が、ヒロインをレイプして自分の女にしようとしている。「自分のものにしたい=レイプ」が常に直列つなぎになっているのは『 女王蜂 』もそうで、僕にはすごく間抜けな演出に見える。当時はそれだけそうした行為が多かったということなのか、たんなる横溝正史の趣味なのか。

あと、両足を湖から出していた青沼カズマの死体が、ブリューゲル《イカロスの墜落》っぽくて面白かった。あのシーンは子どもの頃に見たときから焼きついている。市川版金田一で一番好きな死体シーンかも。

Posted by Syun Osawa at 01:36