bemod

2009年10月11日

黄色い部屋の謎

ガストン・ルルー/訳:宮崎嶺雄/2008年/東京創元社/文庫

黄色い部屋の謎めっちゃ長いw

起こった殺人事件が引きの強いものだったわけでもなく、ただ完全な密室で犯罪が行われたってだけの内容なのに、その事実を突き止めていく過程が妙に遠回りで辛気臭かった。裁判のシーンも含めてルールタビーユの独演会につき合わされるのを時折苦痛に感じたのは、僕が本格推理小説をほとんど読んでこなかったせいだと思う。そこを除けばかなり面白い内容だった。まさか最後にこういう展開になるとは思わなかったなぁ。

最近、市川監督の金田一シリーズなどを観たり、京極堂シリーズを読み始めたこともあって、ミステリーに少しだけハマっている。今回、この本を手に取ったのは、その流れで観た高林陽一監督『 本陣殺人事件 』の中で一柳隆二(密室で殺された賢蔵の弟)が作品中で言及していたからだ。わざわざ名指しで言及するくらいだから、トリックに関する共通項があるのかもと思っていたが、似たところはあまりなかった。

本陣殺人事件 』の密室では、かなり技巧的なトリックを用いていたが、本作では偶然性の強い(というかアクシデント)状況によって、密室でのできごとが事件化している。そのため、推理小説素人の僕には「その偶然がアリなら、どんな推理(憶測)も成立してしまうのでは?」的な思いも残った。

そうした瑣末な素人の突っ込みを100年以上前に書かれた小説に入れるのはやめておこう。ともかく、この作品で一番よかったのは、最後の最後に犯人と主人公の対立軸が明確になったその瞬間である。ずっと溜めさせられていたストレスがこうう形で解放されるのは実に心地がいいし、もしも漫画の連載だったら完璧な立ち上がりだといえるだろう。

この本は、江戸川乱歩が選んだベスト10の第2位らしい。とりあえずここで掲げられている10作品はハズレなしなんだろうから、古典のお勉強という的な意味でも、あと9冊全部読もうと思う。

Posted by Syun Osawa at 01:25