bemod

2010年02月25日

メディア芸術祭 マンガ部門受賞者シンポジウム

2010年2月11日/13:00−14:45/国立新美術館

メディア芸術祭マンガ部門で大賞を受賞した幸村誠氏を迎えてのシンポジウム。なぜか漫画家のしりあがり寿氏が司会を務めていた。しりあがり寿氏って、僕の中では江口寿史、とり・みきとごっちゃになって、名前と作品が一致しない人だったんだけど、かなりジェントルマンな方だった。

この二人に東京工芸大学の准教授・細萱敦氏を加えた3人で、受賞作の『ヴィンランド・サガ』について語るというのが今回のシンポジウムの大まかな内容。まぁ…早い話が、ぐだぐだと作品の内容とか漫画制作の裏話なんかを語るトークイベントである。

幸村氏の話の中で興味深かったのは、かなりエンターテイメントを意識していたことだった。彼は多摩美卒でありながら、絵柄のオリジナリティを追求したり、抽象的な作品世界に入り込んでいるわけではない。むしろ逆に、オリジナリティをグッと押さえ込んだ汎用性の高い絵を描いており、それは読みやすさ、見やすさを意識しているという。ストーリーについても、大まかなストーリーは決まっていて、10話先くらいの話まではある程度考えてあるが、それでも目の前のストーリーは常に面白い方向に流れていくそうな。彼の作品はカケアミも多く、戦いのシーンも濃厚で、紙面から伝わる熱量はかなり高いが、それは人を楽しませるための技術として用いられており、そのため漫画家としての視線はかなり冷めているようである(プロ!)。

その一方で、「心は今でも14歳」というまさかの厨二病告白もしていた。だから、ロスジェネ世代特有の死生観というか、厨二病的感性が作品の裏側に通呈しているのか…。どうりで共感できるわけだ(え?)。あと、『 石の花 』の坂口尚さんに影響を受けたというとも話されていた。坂口尚にハマったってことは、世代的にもそのきっかけは『アフタヌーン』で連載されていた「あっかんべぇ一休」かな? だとすると、幸村氏もアフタヌーンっ子か(うたたねひろゆき氏が連載を始める前のアフタヌーン的な意味で…)。

イベントの最後に質問コーナーがあって、そこでの質問の多くがメタ的な内容ではなく、作品に寄り添ったものだったことも好印象。漫画ってやっぱりファンに支えられているんだよね。評論系のトークイベントとは違って、作品とちゃんと応答している感じ。何だか凄く正しい気がする。僕も『ヴィンランド・サガ』読まないとなぁ…。その前に、本棚の前に積まれている『プラネテス』を読むか(え?)。

Posted by Syun Osawa at 20:31