2010年03月16日
メディア芸術祭 SIGGRAPH 2009
2010年2月14日/10:15−12:15/国立新美術館
SIGGRAPHやアヌシーの映像を流してくれるだけでありがたいので、文句を言うつもりは全然ないのだが、短編作品をプログラムなしに連続上映する問題 というのがあって、それが毎度気になっていた。今回は、事前に ブログ にタイトルだけは載っていた(後は自分で調べろってことねw)ので、作品を後で思い出すための手助けにはなったと思う。それにしても、全26作品を切れ目なく見続けるというのは、頭の切り替えが結構大変で、普通の長編を1本見るよりはるかに疲れる作業だ(慣れたけど)。
SIGGRAPHの映像作品はハイエンドな秀作が多く、内容もテレビCMから個人制作のアニメーションまでバラエティに富んでいる。その一方で、3D映像の技術的な変革に関しては、以前よりは高密度、高画質な映像になっているものの、2Dが3Dになったり、そこからポリゴンが一気に複雑化したときのようなイノベーションは感じられなかった。2Dのアニメがそうであるように、技術の進歩に伴って進化し続けた3D映像も、もはや来るところまで来てしまったのかもしれない。
以下、印象に残った作品だけ、感想メモ。
Project: Alpha
by The Animation Workshop Denmark/デンマーク
学生賞受賞。「猿の惑星」のパロっぽく、猿が乗ったロケットが不時着した先に猿がいて、これといった障壁もなく交尾した…という話。人間と猿では戦いになったのに、猿同士なら…とも見れるし、所詮サルと見ることもできる。
Alma
by Rodrigo Blaas、Cecile Hokes/スペイン
審査員名誉賞受賞。ある雑貨屋の中に置かれた一体の人形に惹かれる少年。店の中に入って人形に触れた瞬間…という一発ネタ。少年も人形も3Dなので、等価に扱われている感じとか、入れかえ可能な感じとかが今風。でも可愛らしいキャラクターだけに、ちょっと怖い。
French Roast
by The Pumpkin Factory/フランス
最優秀作品賞受賞。以前、診た記憶があるが、どこで見たんだっけ? ある紳士がカフェにいて、ホームレスの男性にチップを渡さなかった。その紳士が店を出ようとしたら、財布を忘れていたことに気づき、店から出れなくなった。そこへ酔っ払いの警察官までやってくる。絶体絶命の状況で、お金をスッと差し出してくれたのは先ほど追い払ったホームレスだったというオチ。
この作品はよくできている。台詞がほとんどないので、どこの国の人にも伝わるわかりやすさもあるし、海外の短編アニメ賞ではわりと重きを置かれている社会風刺的なアプローチもしっかりしている。
Window Pains
by Paul Tillery/アメリカ
シェードがめっちゃいい。8bitっぽいイントロからアートワークが凄くいい感じ。パソコンと格闘する中年男性の悲哀。鳴り止まない内線。
Unbelievable Four
by Sukwon Shin、In Pyo Hong/アメリカ
共和党の政治家が3Dキャラクターになって歌っている。これもきっと社会風刺の強い作品なんだろうが、歌詞の意味がよくわからなかったので、何だかほのぼのと見てしまった。アメリカではこの手のわかりやすい共和党批判ものって、リベラルな若者の間でバカ受けすのかな? どのモデルもよく似てる。
Who's Gonna Save My Soul
by Chris Milk/アメリカ
実写と3Dアニメの融合。その融合自体には目新しさはないが、CGを用いる箇所へのアプローチの仕方が結構新鮮な感じだった。歌と雰囲気がかなりマッチしていてグッときたのだが、日本語訳がなかったのであまり深く意味が理解できず。日本語訳が出るのを待つしかない。
Pigeon: Impossible
by Lucas Martel/アメリカ
ミサイルの発射スイッチの入ったトランクにハトが閉じ込められるという展開。ドタバタ加減といい、ピンチの演出といい、エンターテイメントの要素が際立っていて普通に楽しい作品。このクオリティの短編というのは、日本ではほとんどお目にかからないが、海外では快調に作られ続けているわけね。こういうものをたくさん集めて、流すような番組ができると最高なんだが…。
THE SPINE
by Chris Landreth/カナダ
なんかアカデミー短編アニメ賞をとった『Ryan』っぽいなぁ…と思ったら、NFBの作品だった。というか、『Ryan』を作った人だった。残念な事に、この作品も字幕がないのであまりよくわからなかった。でも、3Dを使った会話劇は、顔の表情だけかなり綿密にパターン化すれば、ショートコンテンツとしてかなり有利だということは理解した。日本でもそういう手法を生かした作品が出てくるのかもしれない。
PARTLY CLOUDY
by Peter Sohn(Pixarfilm)/アメリカ
動物の子どもを運ぶコウノトリの話。子どもは雲(神様?)からコウノトリに手渡され、それをコウノトリが親元へ運んでいく。一匹のコウノトリはワニの子どもや電気ナマズの子どもなど凶暴な動物の子どもばかりを運ぶ羽目になり、どんどんボロボロになっていく。それがテンドン(同じパターンを繰り返して笑いをとる手法)で行われつつ、最後にどうなるの? という展開だった。ディズニー作品だけあって、さすがにそつがないつくり。短編の上手さはまさに伝統芸ですな。
Posted by Syun Osawa at 01:59