bemod

2009年03月16日

メディア芸術祭:アニメ部門受賞者作品上映

2009年2月4日−15日/国立新美術館

メディア芸術祭 2009東京アニメフェアもメディア芸術祭も、国が絡んでる割にはなかなかいい感じのイベントに育っているよなと思う今日この頃。

ただ、いずれのイベントも、僕の目当ては普段なかなか見ることの出来ない短編アニメ作品を観ることだけで、その観点からみれば会場内の特設ステージでの上映会は雑音が酷すぎて、環境はあまり良いとは言えない。

しかも短編作品の上映では一度にたくさんの作品を観ることになるので、個々の作品のことを覚えておくのは結構難しい。だから、せめてタイトルと作者名、簡単なストーリー紹介をつけた一覧表くらいは作って欲しい。そのためだけに1000円出してパンフレットを買おうと思ったけど、そこにも載ってなかったので買わなかった。

以下、個々の作品情報がわかっているものだけ雑感。

つみきのいえ

by 加藤久仁生/ROBOT

シンポジウム で加藤さんが話されていたところによると、今回は脚本が別にいて、かなりカッチリとした制作体制のもとで作られたそうな。そういう理由もあって、彼のこれまでの作品にあった曖昧な表現が少し減り、その一方でストーリーやテーマ性の強さが押し出されていたように思う。

また、加藤さんはあまり環境問題などを強く扱うつもりはなかったと話されていたが、水面の上昇によって自分たちの記憶が水に沈むという感覚は世界的にも共通の認識であるので、どこの国の賞レースでも受けた要因にはなっているのだと思う。

短編とはこうあるべきというくらい、非のつけどころないようなシンプルで強い作品だった。シンポジウムでは今後はもっとエンターテイメントな作品も作っていきたいと話されていたので、本作を契機にしてストーリーとキャラクター重視の作品にシフトされるのかもしれない。

こどもの形而上学

by 山村浩二

加藤さんの作品とは対照的に山村さんのオルタナティブ(別の側面)を提示したような作品。短編を作り続けるとこういう作品も作りたくなるんでしょうな。

DREAMS

by 荒井知恵

刺繍アニメ。以前どこかで観た気がするが、どこで観たのかは覚えていない。女の子っぽいというとジェンダー婆に一喝してされてしまいそうだけど、まぁ…そんな作品。

KUDAN

by 木村卓/Links DigiWorks

シンポジウム にも登場された木村さんの作品。木村さんは本業では『モンスターハンター』などのゲームのムービー制作にも関わっているらしい。彼のように本職で3D制作をされている方が、その技術をいかしてオリジナルの短編アニメ作品を作られることはとても嬉しい。たぶん多くのクリエイターは日常の業務が忙しすぎて、それどころではないのかもしれないけれど…。

ALGOL

by 岡本憲昭

ICAF2008 で見たと思う。感情を持つロボットを通じて繰り返される日常の悲哀をミニマルなテイストで描いている。

BUILDINGS

by 上甲トモヨシ

手描き2Dアニメ。ストーリーが強くてアニメらしいアニメ。周りに迷惑をかけていたノッポがチビ達に優しくして、みんなが仲良くなるという話。その演出に人格化したビルを持ってきたところが面白い。

CHRISTIAN BAUER-Tree of Life

by 橋本ダイスケ/UMEX

男女の思いが曖昧に交錯する感じをマーブリング風に描いている。と、メモには残っているがまったく記憶なし。

DEVOUR DINNER

by 水江未来

切抜きで変な生き物がひたすらに何かを食べるというだけのアニメ。雰囲気が村上隆っぽいこともあって、最初は「何だかなぁ…」と思って見ていたけど、途中から生き物の造形の面白さとどう食べられるかという部分のアイデアに引かれて気づいたら夢中で見ていた。グロ可愛い路線を追求したらこうなったのかな?

Cornelius - Omstart

by 辻川幸一郎/WARNER MUSIC JAPAN

コーネリアスのPV。クレイっぽい造形を3Dでやっているのかな。変な生き物が出てくるという点では『DEVOUR DINNER』に近いが、PVということもあってか飛びぬけた印象は薄かった。

shift

by 八木智子

チョウチョのやつ。可愛い。

Syscapes # Interlude

by Eric Schockmel

かなり尺が長かった。シムシティのような箱庭的な世界を3Dで描いている。箱庭に生きる者たちが争い、そうすることでその箱庭が自然的なものからどんどん変化して一番最初のものとは似ても似つかないような形状になっていく。その形状の変化は豊に生きたいという思いから進化したわけではなく、争いのため、軍拡競争の結果進化しているという部分が社会批評的に今の世界を裏側から照射している。既視感のあるテーマと作風ながら、3Dで作られた箱庭の変形がとてもかっこ良かった。

swimming

by 平山志保

肥満体型の男の子が学校のプールで泳ぐ話。そのときの不思議な体験をイラスト風のタッチで描いている。

王さまものがたり3

by 三角芳子/NHK

「3」ってことは、前作があったのか?…と思ってたら、NHKの作品だった。切り絵っぽいアニメ。わがままな王子の成長を描いた作品。王子が花を摘みすぎて花がなくなった土地に、もう一度種をまいて花を育てるという展開。最後に満開の花が咲いて終わるというベタな展開を予想していたら、芽が出たところで終わった。

オーケストラ

by 奥田昌輝、小川雄太郎、大川原亮

ICAF2008 で観た。ICAFでの作者のコメントによると、広島国際アニメーションフェスティバルを狙ってつくられたものらしい。線画で描かれたオーケストラの団員達の動きが音楽にあわせて次々に変化するというもの。線はジャン・コクトー風だけど、志向はフレデリック・バックという感じ。

ギンガムチェックの小鳥

by 長井勝見/NHK

3Dアニメ。NHKみんなのうたのPVらしい。

校長先生とクジラ

by 山村浩二/グリーンピース・ジャパン

グリーンピース。プロパガンダ的な側面として記憶に留めておこう。

コルネリス

by 中田彩郁

手描き2D。上手い。言葉にするのは難しいけど、人物の動きが隣の人の動きに絡んで…という連鎖が気持ちいい横スクロールなアニメーション。GAPのCMとかでも昔見かけたけど、こういう作品は好き。

スケッチブック 〜 華屋八兵衛ノ巻

by 竹内僚平、佐々木大輔、高橋紀乃/文京学院大学

なぜかこの作品を観ているとき、ずっと頭に「がんばれゴエモン!」が頭に浮かんでいた。深い意味は全然ない。

忠告

by 李傑

中国っぽい古典的なアヴァンギャルドポスター風の画面がすごく好きだった。ただ、如何せん翻訳されていないので話が良くわからなかった。これは本当に残念!

ニャッキ! ふみきり

by 伊藤有壱

NHKで不動の地位を確立した感のあるニャッキ。今回の作品もシンプルで面白い。

パンク直し

by 岡本将徳

ICAF2008 で観たと思う。去年4回もパンクの修理をしたので、なんだか凄く懐かしい気持ちになった。よくこれをアニメ化の題材に選んだよなぁ…。

福来町、トンネル路地の男

by 岩井澤健治

鉛筆画っぽい2Dアニメ。これもなかなか凄かった。とにかくよく描いている。大友克洋&21世紀少年&はれときどきぶたって感じ。この作品の圧倒的な画力は僕の趣味に合ってる。悲しい感じとかも。動きはライブトレースだろうか? 手付けだったらなかなか凄いな。

Posted by Syun Osawa at 05:22