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2010年03月27日

束芋展 ― 断面の世代

2009年12月11日−2010年3月3日/横浜美術館

束芋展 ― 断面の世代この展覧会を見に行ってかなり時間が経ってしまって、かなり記憶が曖昧になっているが、メモを見つつ感想など。束芋の作品を見たことはこれまでに何度かあったが、まとまった作品展に行ったのは今回が初めてだった。

束芋という女性は、僕の中では、現代美術に日本のアニメを導入したもう一人の現代美術家ということになっている(別の一人はもちろん村上隆)。村上隆が商業アニメなのに対して、彼女のそれは商業アニメでもアブストラクトアニメでもなく、何と言うか自主制作アニメのノリに近い。さらに、本展覧会のサブタイトルに「断面の世代」とあるように、団塊ジュニア世代から見た素朴な日本の風景が映し出されており、世代も近く、絵的にも好みなため、僕にとって束芋作品は共感の回路しか開かれていないのだ。それがあまりにも露骨に予想できたから、これまでも見に行っていなかったともいえる。

今回、がっつり彼女の作品を見て、当初の想像通りすっかり共感の回路が開かれたことは間違いない。彼女の作品と僕のシンクロ率は高い。ただ、今回一番感銘を受けたところは、そういうサプリメント的な良さとは別のところにあった。それは、彼女が団塊ジュニア世代をしっかりと引き受けているように思えたことだ。彼女は「断面の世代」の「小さな物語への執着」を明確に口にしている。僕は小さな物語しかない現実に対して半ば諦念のようなものを抱いており、そうした諦念込みの日常の風景を描かれても、共感はしてもそれだけだ…と思っていたのだが、彼女はそこに執着することで新しい扉を開こうとしている。強いねぇ。

アニメーションの技法に関しても、かなり手が込んでいて、どの作品も飽きさせない。エンターテイメントとしても十分にいける楽しさと、小さな社会風刺に溢れていて、純粋なアニメファンとしても楽しめた。空間を使ったアニメーションがこれだけ楽しいものになるのなら、日本の商業アニメ界も3Dアニメ化なんかで満足していないで、アニメをどんどんインスタレーション化したらどうか。DVDも下火になってきた今、「体験するアニメ」といった現場感を増していったほうが日本のアニメは生き残るんじゃないかとか(アニメの現場間の話は、前田真宏氏のイベントの感想 でも書いた)、余計なことを思うくらい、束芋氏の作品はアニメファンも取り込む力があったように思う。

Posted by Syun Osawa at 01:16