bemod

2010年03月30日

ベンハムの独楽

小島達矢/2010年/新潮社/四六

ベンハムの独楽何でこの小説を読もうと思ったのか、まったく思い出せないのだが、Amazonのレビューが悪くなかったことが最後に僕の背中を押したことは間違いない。帯分に「カラフルな9つの連環」と書かれているように、趣向も筋立ても全く異なった9つの話が入った短編集だった。

一見、全然バラバラに話が展開されていながら、どこか少しずつ繋がっているというところが、この作品のよさでもあるのだろう。ただまぁ、小説を大して読まない僕のような素人には、三木卓『 路地 』くらいの繋がりでやってくれないと、少し物足りなく感じられる。全体的に薄味というか、味はいろいろ混ざってるんだけど、それを一つの料理として脳が認知してくれないといった感じ。ようするに、もやもやしたまま読み終えたというわけだ。

SFあり、ミステリーあり、恋愛ありと、いろいろなジャンルを軽やかに横断しつつ、それを強引に一つにつなぎ合わせるのではなく、余韻だけでその場にある空気を統合している。その連環は、ゼロ年代の空気系アニメを連想させるような手つきで繋がれており、そこに屈託はない(いい意味で)。僕はそういう屈託のなさみたいなものがあまり得意ではないので、このもやもや感は、きっとそういうところから来ているのだと思う。

個別の作品の中にはいくつか好きなものもあって、最初の作品などは、妙に乙一チックで僕好みだった。そのほかにも大学生の話(これが一番面白かった)では、ブレイクダンスが登場する。ダンスバトルのシーンで「エアトラックス」とか「エアトーマス」みたいな技の名前が出てくる小説に出会ったのは今回が初めてだったので、これはなかなか新鮮だった。

Posted by Syun Osawa at 01:29