2010年05月15日
RIZE
監督:デビッド・ラシャペル/2005年/アメリカ
『 ユー・ガット・サーブド 』のダンスシーンにかなりやられて、その勢いに乗って見た映画。ゼロ年代に作られたダンス映画の中では『 ユー・ガット・サーブド 』と並んでダンスファンの熱い支持を受けた作品らしい。
といっても、『 ユー・ガット・サーブド 』と違い、こちらはドキュメンタリー映画だ。しかもダンスはブレイクダンスのような普遍性の高いものではなく、アメリカのストリートから生まれたオリジナルのダンスが取り上げられている。そのため、ブレイクダンスのような共通言語としてのダンスの話というよりは、もう少しアメリカの黒人コミュニティと密接したダンスみたいなところに焦点が当てられていたように思う。
僕がグッときたのは、作品の中でインタビューを受けている若者が、最近のヒップホップを批判し、「自分達用にしつらえたものはいらない」と言ったところだった。ヒップホップのウェルメイド感をビースティー・ボーイズ的な方向で過剰に推し進めたりはしないのだ。日本のサブカルチャーの世界では、ゼロ年代にウェルメイドをより過剰に推し進めることで新しい地平を見ようとする作品が多かったし、また批評かもそれを後押ししていた。
この作品の中では、彼らはアフリカの原住民の踊りの中に自分達のアイデンティティを見出し、根源的なダンスを追い求めている。この根源を求めて突き進む強さみたいなものは、日本人の抱えているアイデンティティの揺らぎ(それこそ『SRサイタマノラッパー』的な揺らぎ)とは対局にあるものだろう。
日本のニコニコ動画に上がっている「踊ってみた」タグにあるダンスのユルさと、この作品の中にある根源的なものを追い求めるダンスのどちらが強いのかはわからないが、この両輪を捉えることが、ゼロ年代以降に楽しくダンス文化を消費するためには必要なのかもしれない。なんてことは言わないよ、絶対。
Posted by Syun Osawa at 01:18