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2010年06月27日

福田和也の「文章教室」

福田和也/2006年/講談社/四六

福田和也の「文章教室」文章のスキルが一向に向上しないため、書店などで見かけてすぐに目が留まってしまうのがこの手のハウツー本だったりする。これを読めば何とかなるかも…と思ってしまうのだな。でも大抵は当てが外れる。というのも、文章の書き方についての本は掃いて捨てるほど出ているが、そのうち本当に具体的な書き方を教えてくれるような本はほとんどないからだ。

そんな有象無象のハウツー本の中で、この本は一つだけ真理を僕に教えてくれた。それは「好きな作家の文章を書き写せ」というものだ。しかも手書きで。たしかにそうかもしれない。そういえば、『g2』の創刊記念シンポジウム で、石井光太氏も似たようなことを言ってたっけ。でもこの歳になってそれをやるのは、さすがに面倒臭いw 学生時代にやっておくんだったよ…。

書き方の話については、虚構の話もまずまず面白かった。文章を書くというのは、自分の脳内で作り上げた虚構を表現することなので、いかに嘘をつくかということだ。だから書く前提としてしっかりとした世界観を構築しないと、底の浅さがバレてしまう。それを回避するためには読む力は必要だし、何かを書く前には調べることも必要なのだという考え方には説得力がある。逆に言えば、ここをしっかり確立しればいいという前提があるために、似たような新書を濫造する著者を許すということになってしまうのかもしれないが。

福田氏は、本に書かれている文章とブログの文章に明確な区分けをしている。売られている文章は編集者の目をすり抜けてそれだけに価値のある文章になっているという。このあたりの認識は昔からあるが、出版業界の凋落によってあぶれた人だったり、文章の面白さだけで人気を勝ち得た一部のブロガーなどはやはりそれなりのはずで、そういう意味では彼のいう構図もかなり危うくなってきているなとは思う。これはいい傾向では決してなく、何というか、全体的にぐだぐだになっているといった印象だ。

Posted by Syun Osawa at 14:41