2010年08月04日
西洋絵画のひみつ
藤原えりみ/画:いとう瞳/2010年/朝日出版社/A5
アーティストの村上隆氏がニコニコ生放送の「芸術実践論」という番組の中でオススメしていた本。村上隆氏による現代美術解釈の洗脳にあって、最近めっきりコンテクスト厨になってしまったので、その流れで読むことにした。
最初にちら見した段階では、「絵が多い! 文章がわかりやすい! しかも本が薄い!」…と、新書などと比べてもあまり内容を期待できない絵本風の本だったにもかかわらず、これがメチャメチャ面白かった。キリスト教圏の西洋画をキリスト教(正確には旧約聖書と新約聖書)一本で説明してしまう豪腕っぷりにただただ感心。
ルネッサンスによって、これまで禁欲的に守られていた「偶像崇拝の禁止」という条項を、「イコン」という言葉で乗り越えて、聖書の中の登場人物を描いて描いて描きまくる状況が生まれた。イメージ化、キャラ化され物語に彩りを加えられていく。それが文化の厚みというものだろう。
その後、絵画は物語を喚起させるための装置としてだけではなく、独自の展開を見せていく。聖書の物語がなくなり、そこにある風景や人々の暮らしがただ描かれるようになる。つまり現実を描こうとする欲望が大きくなっていくわけだ。ところが、写真の登場で現実を切りとるだけの絵画に早くも暗雲が立ちこめたため、現実の捉え方のほうに焦点が移っていく。
絵画は超現実を描いたり、抽象化されたり、アクションペイントなど絵の外部との距離にその現実を見出したりと、より複雑になって現代に至る。…と、かなり適当に書いてみたがw、ようするにこの本では複雑化する前の西洋絵画の楽しみ方について書かれているのだ。
この本を読んでしみじみ思ったのは、やっぱり僕は物語を換気する装置としての絵画が一番好きかもしれないということだった。戦争と芸術 なんかも、結局そういう雑な話で説明できてしまう程度の趣味である。そんなわけで、雑誌『PEN』別冊「キリスト教とは何か。」増補版を続けて購入した。結論、物語は楽しいw
Posted by Syun Osawa at 00:01