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2010年08月16日

「理科」で歴史を読みなおす

伊達宗行/2010年/筑摩書房/新書

「理科」で歴史を読みなおすある特定領域の分野を歴史と絡めて解説するという本は、以前から結構な数が出版されている。僕はこの手の本(ゼロ年代批評になぞらえてハイブリッド型とでも言えばよいか)がわりと好きで、最近だと、美術と日本史を絡めた並木誠士『 図解雑学 美術でたどる日本の歴史 』を読んだ。

並木誠士『 図解雑学 美術でたどる日本の歴史 』は、日本史の流れに沿う形でその当時の美術の隆盛を説明するシンプルな解説本になっていたが、今回の本は少し趣が異なっている。例えば、数学がどのように体系化してきたかを、国内外の事例(魔方陣など)を挙げながら筆者の視点で解説しており、教科書的な歴史観に捉われない感覚がなかなか新鮮だった。

本書によると、日本は昔、世界随一の金の産出国だったと書かれている。しかし、日本人はその価値を軽く見ていたために海外へ多くの金を輸出してしまい、今はほとんどなくなってしまったらしい。他にも銀や銅なども採れたそうだが、これも枯渇してしまった。こうした金属の流通を過去の帳簿から追うことによって、科学的に当時の世情やその後の各国の勢力図を見ていくと、単なる物語ではない歴史が見えてくる。

そういえば、僕の会社の先輩にも大学院で史学を専攻していた人がいて、そこでやっていることのほとんどは帳簿等の当時の文献をひたすら読み込むことだと言っていたっけ。だから歴史を読むというのは、本来そういうことなのかもね。

タイトルに「理科」でと書かれてあるが、ようするに科学的な知見で歴史を見ようという話で、僕が当初想定していた科学史の話とはニュアンスが異なる。でも、数学に関しては少しだけ科学史っぽいネタが書かれていて、こちらもなかなか面白かった。こちらは同じ著者の『「数」の日本史』という本にまとまっているようなので、次の機会に読んでみようと思う。

Posted by Syun Osawa at 02:18