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2010年09月22日

pen別冊 キリスト教のすべて

2010年5月15日号/阪急コミュニケーションズ

pen別冊 キリスト教のすべて村上隆氏がニコ生でやっていた番組「芸術実践論」の中で、藤原えりみ『 西洋絵画のひみつ 』という本を紹介していて、西洋絵画におけるキリスト教のコンテクストの根深さに改めて気づかされた。

絵も売り物というか、金銭的な価値を持つ物質なわけで、そうである以上、ニーズに応えた絵画が多数制作されるのは当然といえば当然。聖書の文字の読めない民衆のために、聖書の物語を説明するための道具として絵画が用いられてきたという歴史と、それが美術としての意味を深めていく歴史がつながっていることも当たり前の話なのである。

そんな当たり前のことにさえ関心を持ってこなかった僕には、このムック本に書かれている内容はとても新鮮で楽しいものだった。藤原えりみ『 西洋絵画のひみつ 』と内容がかなり被っているとはいえ、こちらのムックのほうが図版が多く、取り上げている内容も広い。

このムック本の中で紹介されている絵画だけを見ても、1000年代の前半から現在に至るまでの、非常に長い期間に描かれた絵画が紹介されていた。これだけ長きにわたって多くの人々に共有される物語も他にないだろうし、東洋人からしたら「知らんがな…」的なファンタジーが美術界と併走してしまっているという困難さをどう考えればいいのだろうか?

さらに悩ましいのは、宗教改革によってルターが偶像崇拝に異を唱え、イコンとして描かれたキリストに突っ込みを入れた結果、カトリックの人たちは自分たちの結束力を強めるために、より過剰に聖書の物語を絵画の中に織り込むようになってしまった点であろう。

さすがに今は聖書の中の物語が現代美術のコンテクストに大きな影響を与えているということはないだろうけれど(知らないけどね…)、近代までの美術をより深く楽しむためには新約聖書と旧約聖書の読み込みといのは避けて通れない道なような気がしている。絵画を見る限り、馬鹿っぽいエピソードもかなり含まれていると思うので、正直読むことにためらいもあるが、敬愛するブリューゲルやヒエロニムス・ボスの絵をより深く楽しむためにはやむを得ない。聖書をダイレクトに読むのは無理なので、もう少しこの手の導入本(ガイド本)を読んでテンションを上げていく事にしたい。

Posted by Syun Osawa at 01:22