2010年12月16日
世界のアニメーションシアター WAT2010
2010年11月13日−12月10日/下北沢トリウッド
海外のインディペンデント系の短編アニメ作品を見られる数少ない上映会のうちの一つ。毎年、春とか秋とかに行われていて、アヌシーやアカデミー賞受賞作品を含むレベルの高い作品が上映されている。今回も非常に刺激的な作品をいくつも見ることが出来た。
にも関わらず観客が少ないのが寂しいね。休日に行ったのに観客が数人程度では、いつまで続かないのではないか。ここで上映されている作品が続々DVD化され、ゲオやTSUTAYAに並ぶんなら僕はわざわざ下北まで行ったりしない。でも、実際にはこの上映会で一回上映されてそれっきりという作品も少なくない。だから、見逃してはいけないと思って足を運ぶのだが、それでも僕の飽き性とかいろいろあって、大部分は見れずに過ぎていってしまうんだよなぁ。うーむ。
今回は時間的な問題でBとCプログラムだけを見た。以下、感想メモ。
Bプログラム
生命の線
by Angela Steffen/ドイツ
キャラクターが特徴的だったのは覚えているが、どんな話だったかはまったく記憶なしw いきなりそんなんで大丈夫かw なんか万華鏡みたいにグルングルン画面が変化して、「ああ…こういうのFLASHでやったら面白そうだな」的なことを思っていたと記憶している。
アングリーマン 〜怒る男〜
by Anita Killi/ノルウェー
アヌシー審査員特別賞・観客賞、広島フェスティバルグランプリ受賞作品。今回の上映会の目玉っぽい。絵が特徴的で、動きが紙の人形をコマ撮りしているような演出になっている。ストーリーは全般が父親の暴力というDVの話で、そこからファンタジーに展開している。子どもの心象はよく表されているように思ったが、ファンタジーになる展開は僕には逃避に映ってしまうのだが、そのへんどうだたのだろうか。フランスでも観客賞をとっているし、日本でもグランプリなので、まぁ…がっちりハート掴んじゃってるわけだから、ああいう話の流れはアリなんだろうね。
木の上の海賊たち
by Stefan Schomerus/ドイツ
この3Dはエグかった。『スタンド・バイ・ミー』みたいに大人からしたら些細なことが、子どもたちにとってはかけがえのない時間になっているというような話。内容もシンプルで味わい深く、短編作品としてのまとまりが非常に良い。ストップモーションの撮影スタジオが手伝ったらしいのだが、これで学生作品だというのだから驚きだ。
ホワイトテープ
by Michal Kranot、Uri Kranot/イスラエル、デンマーク
この作品の前に上映された「アングリーマン」と「木の上の海賊たち」のことを考えていて、実はあまり覚えていない。アレクサンドル・ペトロフみたいに油彩っぽい絵画をガリガリ動かしていて、その時点で画面に対する強いこだわりがビシビシ出ている。社会的な重いテーマを扱っていたように思うが、ちょい抽象度が高くて僕にはやや難しい内容だった。
カトリーン
by Malik Thomas Spang Bruun/デンマーク
この作品のキャラクター(というか絵のタッチ?)はかなり可愛かった。内容的には、決して腹を抱えて笑うような内容ではないのだが、内容とビジュアルのギャップに西島大介的な美意識を見たような気がする。これも学生作品らしい。
プログラムC
水泳王ジャン・フランソワ
by Tom Haugomat、Bruno Mangyoku/フランス
ビジュアルが大変印象的だった。こういう思い切ったキャラ造形ができるところが、インディペンデント系のアニメの良いところだと思う。特にフランスものは洒落ていて、日本人の感性とも相性がいい。可愛いキャラクターとは対照的に、内容は社会問題を含んだなかなか深いものだった。コミュニケーションに関する問題というのは、フランスでも日本と同様に一つの大きなテーマになっているのね。
スポットとスプラッチ 〜雪あらしの中で〜
by Lotta Geffenblad、Uzi Geffenblad/スウェーデン
3Dアニメとしてのクオリティ高すぎる。仲良し二人組みが吹雪の中で離れ離れになるという軽いエピソードをアニメ化している。この作品って『アストンの石』を作った二人なのね( 第4回 世界映画人会議 2 の時に見かけたな、そーいや)。あの作品はかなりクリティカルな内容だったけど、もう少し商業路線というかエンタメ系に舵を切ったのかな?
トレイン・ボンビング
by Bodie Jahn-Mulliner ほか3名/デンマーク
キャラの雰囲気がアメリカの漫画でブッシュを叩きまくってた作品を連想させたんだけど、その漫画の名前をド忘れしてしまった。アニメーションの王道である「追いかけっこ」を今風のアレンジで展開している作品。
ミス・リマーカブルの就活
by Joanna Rubin Dranger/スウェーデン、アイルランド、デンマーク
モノクロのマンガ風のタッチで描かれたシンプルなキャラクターが動き回る中編作品。今回見た作品の中では『アングリーマン 〜怒る男〜』が一番話題の作品なんだろうけれど、僕的にはこの作品が一番面白かった。アイデンティティ問題というか、「自分が何をやりたいか」といった中二病的な問題を扱っていて、日本人が作ったのかと思うような内容だった。今や、この手の問題はどこの国でも同じような状況になっているわけね。
中二病の20代女子がクリエイティブな人生を送ろうとして、失敗続ける話。何を失敗だと考えるのかは人それぞれだし、選択肢が多すぎて逆に焦点が定まらない気持ちを整理することは誰にだって難しい。また、自分が世間から与えて欲しいという承認欲求ばかりでは他人は離れていくし、そういう気持ちは孤独の中でどんどん膨らんでいってしまう。こういった若者の内面に関する問題は民族や国家とは関係がなく、先進国の多くの若者が同じように抱えている共通の問題なのだと思う。そういう状況をこのアニメはコミカルに、そして上手に描いていたと思う。
Posted by Syun Osawa at 01:53