bemod

2010年12月25日

X'mas限定ライブ Aira Mituski × Saori@destiny

2010年12月12日/19:00−21:10/川崎Serbian Night

川崎セルビアンナイトって、ライブハウスというよりはクラブっぽい。そのためステージも低く、後ろのほうからはかなり見えにくかった。ヒップホップのDJイベントでゲストにR&B系の歌手が出てくるような突発ライブならあんな感じのステージでも文句はないが、スタンディングのライブであのステージの低さは何とも…。

昨日のアイラのインストアライブの感想 から、何だか棘のある言い回しが増えているのは、おそらくアイラの展開に対して、ファンとして少しだけ不満を抱いているからだろう(DDのくせにすまん)。

今回のライブは文句なく盛り上がったし、僕自身十分楽しんだ。ただし、その盛り上がりの主要な部分はSaori@destinyによるところが大きい。彼女が今年の4月に『World Wild 2010』をリリースして以降、彼女のライブは凄まじく盛り上がっている。その盛り上がりはこれまでのミックスを打つようなアイドルヲタ的なものでもなく、クラブカルチャーに頭でっかちになっているテクノヲタ的なものでもない。一言で言えば「ただ単純に」盛り上がっているのだ。

今回のアイラミツキとSaori@destinyの合同イベントも例外ではなく、最初に出てきたSaori@destinyが会場のムードを最高潮まで押し上げていた。後半のアイラミツキのライブが終了した後、アンコールの歓声の中に「サオリ!サオリ!」の声が混じり、多くの人がそれに同調した。これはSaoriファンのちょっとした悪戯に、他の客が乗っかったことが原因なのだが、これはSaoriファンがアイラファンより多かったということではなく、Saoriの方が盛り上がったという事実を多くの客が無意識に受け入れていたからだろう。

では、アイラはどうだったか?

こちらもSaori同様に盛り上がった。新曲「???」も良好だったし、前日も歌った「Summeeeeeeeer set」も客を沸かせることに成功していた。そして、彼女のライブの定番曲である「イエロー・スーパーカー」のタオルの数を見れば、Saoriのファンよりもアイラのほうがファンが多かったことがわかる。にもかかわらず、アンコールではSaoriコールの悪乗りを許し、2chのスレッドでもアイラよりSaoriの方が盛り上がったという意見が大半を占めた。

こうした事実から導き出される答えは簡単である。

今、アイラを応援しているファンの多くは、古参ヲタを除けば単純に盛り上がりたいだけの層なのではないか。これは僕の個人史とも結びついてしまうが、アイドルが好きでなおかつダンスミュージックが好きな層が一定数いることは間違いない。良く言えば、アイドル歌謡だけでは物足りず、純粋にダンスミュージックとアイドルのハイブリッドを楽しみたい層。悪く言えば、クラブに通いながらダンスミュージックを楽しむことも、アイドルヲタの道をひたすら邁進することもできず、音楽の知識も中途半端、見てくれも中途半端、ファッションも中途半端、にもかかわらず自意識が邪魔してそういう自分を認められないような広義の意味でのDDの層が支えている気がしてならない。

もし仮にこうした層がアイラを支えているのだとしたら、彼女に求められているものはK-POPでも、マニアックなエレクトロでもない。アイドルとダンスミュージックを極めて明確にハイブリッドし、AKB48よりもPerfumeよりも、Mark Knightよりも2 many DJ'sよりも(このチョイスに含意はない)、踊れて盛り上がれる空間を作り出すことではないだろうか。

Saori@destinyが『World Wild 2010』以降のライブで演出してみせたのはまさにそこだった。他のライブでは消化不良なところを、最後にもうワンメーター上へ押し上げてくれたのが彼女のライブだったのだ。

もちろんアイラにもそれができる。それは決して可愛い路線ではない。「Wonder Touch」や「Bad Trip feat. Terukado」、「ハイバッシュ」など、やれば確実に盛り上がれる曲をたくさん持っている。そうした楽曲を話題のアイドルやダンスミュージックのネタでマッシュアップしたりしながら、ただ「単純に」上がれる空間を演出することができれば、自分から「オイ!オイ!」なんて誘導しなくても、みんなが勝手に沸いてくれるに違いない。

僕らはただ単純に盛り上がりたいだけなのである。

彼女たちの曲に今、それ以上のコンテクストが必要だろうか?

Posted by Syun Osawa at 15:10